2027年3月1日から、市販薬と成分が同じ処方薬をもらうと、薬剤費の4分の1が「特別の料金」として窓口の支払いに加わります。この4分の1は健康保険の給付から外れる部分なので、1割負担の人も3割負担の人も同じ額を払います。ただし全員に加わるわけではなく、厚生労働省は特別の料金を求めない場合を9つ挙げています。
まず確認するのは、商品名ではなく成分名です。厚生労働省が対象医薬品リストを公表しているので、お薬手帳か処方箋に書かれた成分名を照らしてください。対象だった場合は、次に自分がその9つのどれかに当たらないかを見ます。長く使っている人は、ここから先が飲み薬と塗り薬でまったく違います。
いくら増えるのか。厚労省が示した例では1.4倍から1.5倍ほど
社会保障審議会医療保険部会のとりまとめ資料に、3割負担の場合の負担のイメージが4例あります。初診料や調剤基本料などの技術料は、これとは別にかかります。
| 薬 | 見直し前 | 見直し後 | 同じ成分の市販薬 |
|---|---|---|---|
| 解熱鎮痛薬(5日分) | 50円 | 70円 | 約500円 |
| 去痰薬(5日分) | 50円 | 70円 | 約1,500円 |
| 便秘薬(30日分) | 360円 | 550円 | 約2,000円 |
| 抗アレルギー薬(30日分) | 540円 | 790円 | 約1,000円 |
資料の注記では、薬価は同一成分でもっとも使われている品目のものを使い、市販薬の額は確認できた範囲でのネット上の最安値としています。30日分の2例で増える額は、便秘薬が190円、抗アレルギー薬が250円です。
計算の手順は別の事務連絡に出ています。薬価16円50銭の錠剤を1日2錠・30日分もらう場合の例が、次のように示されています。
- 特別の料金 … 公表されている「薬価の4分の1」4円13銭 × 60錠 = 247.8円 → 250円
- 保険が効く部分 … 12円37銭 × 2錠 = 24.74円 → 2点、30日分で60点 = 600円
- そのうち患者の自己負担(3割)… 180円
- 窓口で払う合計 … 250円 + 180円 = 430円
特別の料金は点数に換算せず、円のまま計算します。10円以上になったときは5円未満の端数を切り捨て、5円以上10円未満の端数は10円に切り上げます。10円に届かないときも10円に切り上げるので、対象医薬品が入っていれば1回の処方につき最低10円はかかります。
同じ処方箋に対象医薬品が複数入っている場合は、合算してから端数を処理します。
対象は「成分・投与経路・1日最大用量が同じ」処方薬
対象になるのは、薬局やドラッグストアで処方箋なしに買える要指導医薬品・一般用医薬品と、成分と投与経路が同一で、1日の最大用量も異ならない医療用医薬品です。とりまとめ資料では77成分1,042品目とされ、抗アレルギー薬、鎮痛消炎剤、胃腸薬、去痰薬、皮膚保湿剤などが挙げられています。
厚生労働省のページには施行時点の有効成分の一覧が載っています。ロキソプロフェンナトリウム水和物、フェキソフェナジン塩酸塩、ヘパリン類似物質、尿素、酸化マグネシウム、L-カルボシステイン、ビサコジル、フェルビナク、ラメルテオンなどが並び、白色ワセリン、精製水、ハチミツのように薬という感じのしないものも入っています。
ここで気をつける点が二つあります。
- 同じかどうかの判断はメーカー単位ではなく成分単位です。 とりまとめ資料に明記されています。商品名が市販品と違っても、成分が同じなら対象になりえます。
- 成分が同じでも、効能・効果で分かれます。 市販薬にない効能・効果を目的に処方される場合は対象外です。厚生労働省はフェキソフェナジン塩酸塩を例に挙げています。市販薬で認められているのは花粉やハウスダストによる鼻のアレルギー症状の緩和までで、蕁麻疹や湿疹・皮膚炎に伴うかゆみは入っていないため、そちらを目的に処方する場合は特別の料金の対象外になります。
対象医薬品の一覧は、原則として毎年4月1日に更新されることになっています。毎年3月頃に事前公表される予定です。
特別の料金を求めない9つの場合
施行通知が挙げている9項目です。厚生労働省のページの本文では入院時の処方が独立の項目になっていないので、通知の並びで読むほうが確実です。
| 特別の料金を求めない場合 | 読み方 |
|---|---|
| 18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者への処方・調剤 | 誕生日ではなく、18歳になった年度の3月31日まで |
| がん又はがん治療に関連して生じた状態への処方・調剤 | がんと関連のない症状への処方は対象のまま |
| 指定難病・小児慢性特定疾病(18歳から20歳までの者に限る)又はこれらに関連して生じた状態 | 関連のない症状への処方は対象のまま |
| 国の公費負担医療における処方・調剤 | 生活保護の医療扶助を受ける場合を含む。公費負担医療でない分は対象 |
| 入院時の処方(退院時処方を含む) | 外来に戻ったあとの処方は対象 |
| 侵襲を伴う検査・処置・手術に伴う処方・調剤 | 検査等の後14日以内分の処方・調剤に限る |
| 医師が年間を通じた症状の持続と治療の継続性を確認し、長期の使用が医療上必要と認められる場合 | 飲み薬と塗り薬で基準が別。次の2つの節で扱います |
| 類似の市販薬で承認されている効能・効果では対応できない状態への処方・調剤 | 対応表が厚生労働省から公表されている |
| 市販薬の使用が特に困難な場合 | 妊婦、妊娠している可能性がある者、授乳婦が、その市販薬を服用できない場合 |
リハビリテーションの実施に伴う処方は、通知では特別の料金の対象です。侵襲を伴う検査・処置・手術と同日にその医療行為で生じた症状へ新たに処方する場合とは、扱いが分かれます。
在宅時医学総合管理料などで薬剤料が包括されていて院内処方を受けた場合は、対象医薬品の薬剤料が発生しないため、特別の料金はかかりません。
指定難病・小児慢性特定疾病の確認には、自治体が発行する受給者証または登録者証が原則として使われます。当面の間(令和9年度末まで)は、ほかに客観的に確認できる書類でもよいとされています。該当する方は、受診のときに受給者証を持っていくのが確実です。
飲み薬は半年の使用実績から。頓服と季節性のものは外れない
内服薬で特別の料金の対象外になるのは、年間を通じた継続使用があり、年間処方日数がおおむね50週(1年)である場合です。ただし通知は、一律に50週の処方実績を求めるのではないと書いています。
半年間の使用の継続が確認でき、今後も年間を通じた長期使用が医療上必要であると医師が認めている状態であれば、50週に達する前でも対象外と判断してよいことになっています。
ここで外しやすいのが次の3点です。
- お薬手帳などで半年の実績が示せないと、その間は対象です。 初診時を含め、過去半年間の使用の継続が診療情報提供書・お薬手帳・オンライン資格確認による薬剤情報などで確認できない場合は、少なくとも半年の実績ができるまで特別の料金がかかります。医師に網羅的な服薬歴の確認を求める仕組みではなく、患者が示す情報で判断されます。
- 半年たてば自動で外れるわけではありません。 半年経過の時点で、今後も通年の長期使用が必要であることが要ります。残り半年以内に処方が不要になる見込みなら、引き続き対象です。
- 他院での期間は合算できます。 他の医療機関で4か月続けたあと自院で2か月続けているなら、合わせて6か月程度の実績と判断してよいと通知が例示しています。
逆に、長く使っても対象のままになるものは、通知に明記されています。
- 頓服薬。 対象外とするのは計画的に毎日服用する場合なので、急性の症状に対症療法的に使う頓服薬は、定期的に処方されていても特別の料金の対象です。
- 季節性のもの、月に数日だけ使うもの。 季節性アレルギー性鼻炎のように特定の期間に限って症状が出る場合や、慢性疾患でも症状に応じて月に数日だけ使う場合は、複数年繰り返していても対象です。ただし服用開始から半年にわたって症状の持続または反復と継続的・反復的な使用が確認され、通年で使うことが医療上必要と医師が認める場合は対象外になります。
- 市販薬を飲んでいた期間。 年間を通じた継続使用の実績は、医療用医薬品の使用歴だけで見ます。市販薬の使用状況は医師が把握しにくいためです。
入院や仕事の都合で通院が途切れた場合は、中断前の処方終了日から1か月以内に同じ病名または症状で処方が再開されれば、継続性は損なわれません。1か月を超えても、慢性疾患など明らかに同一の疾病・負傷と推定できる場合は、引き続き対象外として扱われます。
なお、施行前の服薬歴も判断に使えます。2027年3月1日の時点ですでに半年続けている方は、施行と同時に対象外と判断される余地があります。
塗り薬・貼り薬は、病名と使い方で決まる
外用薬は条件が狭く、通知に列挙されたものだけです。これに当たらない場合は、年間を通じて処方されていても特別の料金の対象になります。
| 薬 | 対象外になる条件 | 期限 |
|---|---|---|
| 点眼薬 | 通年性のアレルギー性結膜炎等の治療のため、医師の指示の下で毎日使用し、年間を通じた継続使用の実績がある | 期限なし |
| ヘパリン類似物質・尿素 | アトピー性皮膚炎の治療のため、医師の指示の下で毎日使用し、年間を通じた継続使用の実績がある | 期限なし |
| ステロイド外用薬 | 再燃を繰り返すアトピー性皮膚炎に対し、プロアクティブ療法として年間を通じた継続使用の実績がある | 期限なし |
| 鎮痛消炎外用薬(湿布など) | 慢性かつ重度の疾患(例:変形性膝関節症のKellgren–Lawrence分類Grade4)に対し、医師が年間を通じた疼痛管理として継続使用の実績を認める | 令和10年度末(2029年3月31日)まで |
| 皮膚保湿剤・皮膚保護剤・角化症治療剤 | 症状等が十分に改善せず、直近1年以内に免疫抑制剤等による全身療法を併用した治療歴があり、医師の指示の下で毎日使用し、年間を通じた継続使用の実績がある | 令和10年度末(2029年3月31日)まで |
下の2行は経過措置です。とりまとめ資料は、重症患者への長期使用の実態を踏まえた当面の取扱いとし、診療ガイドラインのエビデンスの状況などを踏まえて必要な見直しを行うとしています。2029年4月以降も同じ扱いが続くとは書かれていません。
影響が出やすいのは、アトピー性皮膚炎以外の乾燥や湿疹で保湿剤をもらっている方、変形性膝関節症のGrade4に当たらない痛みで湿布をもらっている方です。年単位で続けていても、飲み薬のような「おおむね50週」の道筋はありません。
対象かどうかは処方箋の新しい欄で分かる
2027年3月1日から処方箋の様式が変わり、「一部保険外療養」欄が新設されます。対象医薬品ごとに、特別の料金の対象なら「○」、対象外なら「―」が書かれます。
- 薬局の薬剤師は、「○」なら特別の料金を受け取り、「―」なら受け取りません。どちらも書かれていない場合は処方医に疑義照会をします。
- ただし18歳に達する日以後の最初の3月31日までの人、または妊婦・妊娠している可能性がある人・授乳婦でその市販薬を服用できない場合は、年齢などの確認で対象外が明らかなので、疑義照会なしで対象外として扱われます。
- 当面の間は、改正前の処方箋を手書きで修正して使うことも認められています。その場合は薬の名前のそばに「一部保険外療養」として「○」か「―」が書かれます。
払う場所は、院外処方なら保険薬局、院内処方なら医療機関の窓口です。
対象か対象外かの判断は、医師の診察を踏まえて行われます。自分で申請する窓口はありません。診察のときに疑問があれば、処方医に聞くのが筋道です。通知も、処方医は診察時に患者からの質問に説明を行うことが適当だとしています。
厚生労働省は、この制度は対象医薬品の処方を控えさせることを意図したものではなく、医師は対象かどうかに関わらず個々の患者の症状に応じて最適な薬を処方することと明記しています。特別の料金を避けるために薬を変えてもらう、という読み方をする制度ではありません。
2027年2月に出た処方箋を3月に薬局へ出すときは対象外
施行日をまたぐときの扱いも通知にあります。2027年3月1日より前に対象医薬品が処方され、同日以降にその処方箋が保険薬局に提出された場合は、制度施行前の取扱いになり、特別の料金はかかりません。リフィル処方箋や分割指示のある処方箋の2回目以降の調剤も同じです。
長期収載品の選定療養との関係は、通知で次のように整理されています。一部保険外療養の特別の料金の対象になる薬は、長期収載品の選定療養の特別の料金の対象外です。逆に、上の9つのどれかに当たって一部保険外療養の対象外になった薬を、患者が自分の選択で長期収載品のまま使う場合は、長期収載品の選定療養の特別の料金がかかります。同じ薬に両方が重なることはありません。
ただし同じ処方箋に、一部保険外療養の対象医薬品と別の長期収載品がそれぞれ入っている場合は、両方の特別の料金が生じることがあります。
まだ決まっていないこと
- 特別の料金に消費税がかかるかどうかは未定です。 2026年9月30日の事務連絡は、今後の税制改正に係る議論を踏まえ、2026年末を目途に追って示すとしています。参考までに、長期収載品の選定療養の特別の料金には消費税が課税されています。
- 対象医薬品の一覧は毎年変わります。 原則として毎年4月1日に更新され、毎年3月頃に事前公表される予定です。いま対象外の成分が後から入ることも、逆に外れることもあります。
- 施行後に検証されます。 とりまとめ資料は、受療行動への影響や処方シフトの状況を含めて施行後に検証し、必要なら見直すと書いています。
この記事の内容は2026年10月4日時点で厚生労働省が公表している政令・省令・告示と通知にもとづいています。変わりうるのはこの節の3点です。
参考資料
- 厚生労働省 OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しについて(OTC類似薬の一部保険外療養) — 令和9年3月1日の施行日、施行時点の対象有効成分の一覧、対象外となる場合、対象医薬品リストのExcel・PDF。2026年9月30日更新
- 厚生労働省 要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性が特に高い医療用医薬品の処方又は調剤に係る一部保険外療養について(令和8年9月30日 保医発0930第6号) — 対象外となる9項目、長期使用の基準(内服薬・外用薬)、処方箋の「一部保険外療養」欄、施行日をまたぐ処方箋の扱い、長期収載品の選定療養との関係
- 厚生労働省 一部保険外療養における費用の計算方法について(令和8年9月30日 事務連絡) — 特別の料金の計算式と端数処理、薬価16円50銭の錠剤を1日2錠30日分もらう場合の計算例、消費税の扱いが未定であること
- 厚生労働省 OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(医療保険部会とりまとめ) — 77成分1,042品目、3割負担の場合の負担のイメージ4例、成分単位で判断すること、経過措置の趣旨、施行後の検証
※個人差があります。受診の判断は医師にご相談ください。