眠れない夜が3か月続いているなら─睡眠障害科はどこにあって何をしてくれるのか

結論

不眠が週3回以上・3か月超なら慢性不眠症として精神科・心療内科・睡眠障害内科で診てもらえます。日本睡眠学会のサイトで認定施設を検索するか、まずかかりつけ医に紹介状を依頼してください。

どうする?編集部 · · 読了 約6分
目次(10項目)
  1. 2026年6月、病院の看板が変わった─18年ぶりの診療科追加
  2. 不眠が「慢性」になるライン─3か月という区切り
  3. 不眠の背景に別の病気が隠れていないか確認する
  4. 受診先の探し方
  5. 精神科・心療内科への抵抗を感じる場合
  6. 初診でやること─問診票・睡眠日誌・検査の流れ
  7. 薬を使わない治療「認知行動療法(CBT-I)」
  8. 睡眠薬の種類と依存への備え
  9. 費用の目安
  10. 参考資料

眠れない日が続いても、「どの科に行けばいいか分からない」と受診をためらう人は少なくありません。睡眠の問題を診る診療科が、呼吸器内科・精神科・心療内科・神経内科と分散しているのが長年の課題でした。2026年6月、厚生労働省の医療法施行令改正によって、病院が「睡眠障害内科」「精神科(睡眠障害)」のように睡眠障害を冠した科名を看板に出せるようになりました。この記事では、慢性不眠症の判断基準から受診先の具体的な探し方、初診の流れと費用、薬を使わない治療の選択肢まで整理します。

2026年6月、病院の看板が変わった─18年ぶりの診療科追加

日本では、病院が看板に示せる診療科名は医療法施行令で定められています。2008年以来18年間変わらなかったこのリストに、2026年6月、「睡眠障害」が新たに組み合わせ標榜できる事項として追加されました。

これまで、睡眠の問題を専門に診ていても「睡眠障害科」の看板は出せませんでした。「睡眠外来」「睡眠センター」という表記は使われていましたが、患者が地図アプリやウェブで診療科として検索しても見つかりにくく、受診の入口がはっきりしない状態が続いていました。

今回の改正で使えるようになった表現の例を示します。

  • 内科(睡眠障害)
  • 精神科(睡眠障害)
  • 睡眠障害内科
  • 睡眠障害精神科
  • 神経内科(睡眠障害)

「睡眠障害科」という単独の科名は認められていません。必ず既存の科名と組み合わせる形になります。それでも、「睡眠外来」という表記より「睡眠障害内科」の方が患者が目当ての施設を見つけやすくなるという点では、一歩前進です。

看板の変更が現場に広がるには、半年から1年以上かかる見通しです。今すぐ「睡眠障害内科」という看板を掲げた病院が急増するわけではないため、受診先を探す際の注意点は後の節で説明します。

不眠が「慢性」になるライン─3か月という区切り

国際睡眠障害分類(ICSD-3)では、次のどれかが3か月以上続く場合を慢性不眠症と定義しています。

  • 寝つくまでに30分以上かかることが多い(入眠困難)
  • 夜中に目が覚めてなかなか再び眠れない(中途覚醒)
  • 朝、希望より2時間以上早く目が覚める(早朝覚醒)

これらが週3回以上現れ、日中の疲労・集中力の低下・気分の落ち込みなど生活への影響がある状態を指します。

2か月程度の段階でも、「慢性化させない」ためにかかりつけ医に相談する方が対処は早くなります。3か月を超えると、放置しても自然に戻りにくくなるという点が、専門家が受診を勧める理由の一つです。

不眠の背景に別の病気が隠れていないか確認する

慢性的な不眠に見えても、別の睡眠障害が原因のことがあります。

睡眠時無呼吸症候群(SAS):大きないびき・口呼吸・日中の強い眠気がある場合。不眠薬では改善しないため、別のアプローチが必要です。

むずむず脚症候群(RLS):夜に脚に不快感があって眠れない場合。鉄分不足や腎機能の問題が関係することもあります。

過眠症・ナルコレプシー:眠れないのではなく、日中に突然強い眠気が来る場合。これも睡眠外来の専門領域です。

受診時に「夜中に何度も目が覚める」「いびきがひどいと言われる」「脚がむずむずして眠れない」といった情報も合わせて伝えてください。問診の方向が変わります。

受診先の探し方

看板の変更を待つより、現時点で専門家を見つける確実な方法は二つあります。

日本睡眠学会の認定施設検索 学会のウェブサイト(jssr.jp)から「認定医・認定施設」のページで都道府県別に施設を検索できます。睡眠専門医が在籍し、終夜睡眠ポリグラフ検査が実施できる施設が多く登録されています。

かかりつけ医への相談と紹介 まず内科・かかりつけ医に「眠れない状態が3か月続いている」と伝え、専門施設への紹介状を依頼するルートが最もスムーズです。紹介状なしで睡眠専門施設を受診すると、紹介状なし加算(200〜5,000円程度、施設規模による)がかかることもあります。

精神科・心療内科への抵抗を感じる場合

不眠症の治療は精神科・心療内科が担うことが多いですが、「精神科はハードルが高い」と感じる人もいます。現在の精神科外来は「眠れない」「ストレスで気分が重い」といった相談を日常的に受け付けており、入院を要する重篤な精神疾患の治療施設とは全く異なります。内科医が「内科で診る」と判断した場合は内科でも対応できます。

初診でやること─問診票・睡眠日誌・検査の流れ

睡眠外来または専門医の初診では、次のような流れになります。

受診前に準備できること 2週間分の睡眠日誌(就床時刻・眠れた時刻・覚醒回数・起床時刻・昼寝の有無)を手書きまたはスマートフォンのメモで記録しておくと、医師が状況を把握しやすくなります。

アテネ不眠尺度(AIS) 8つの質問に0〜3点で答える、国際的に使われる不眠評価ツールです。合計6点以上で「不眠症の可能性」とされます。受診前にウェブで試してみると、自分の状態の整理になります。

ポリソムノグラフィー(終夜睡眠ポリグラフ検査) 睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群が疑われる場合に実施する一泊入院の検査です。脳波・呼吸・体動を記録し、夜間の状態を客観的に把握します。すべての初診で必要なわけではなく、症状に応じて医師が判断します。費用は3割負担でおよそ1〜2万円が目安です。

薬を使わない治療「認知行動療法(CBT-I)」

慢性不眠症の治療ガイドラインでは、まず「認知行動療法(CBT-I:Cognitive Behavioral Therapy for Insomnia)」を試すことが推奨されています。薬物療法と比べて再発しにくく、長期的な効果が安定しているとする研究が複数あります。

CBT-Iの中心的な技法は三種類あります。

睡眠スケジュール法 毎日決まった時刻に起きることで、体内時計を整えます。眠れなくても同じ時刻に起床し、眠くなるまではベッドに入らないようにします。最初の1〜2週間は日中の眠気が増しますが、徐々にリズムが整ってきます。

刺激制限法 ベッドは眠ることだけに使う習慣づけです。眠れないままベッドで長時間過ごすと、ベッド自体が「眠れない場所」として脳に記憶されます。眠れなければ一度ベッドを出て、眠くなってから戻る方法です。

睡眠制限法 実際に眠れている時間だけベッドにいることで、眠る圧力を高める方法です。最初は就床時間が短くなりますが、徐々に延ばしていきます。急激な実施はかえって体調を崩すことがあるため、専門家の指導のもとで進める方が安全です。

CBT-Iは専門外来での対面指導が最も効果的ですが、「毎日同じ時刻に起きる」「眠れなければベッドを出る」という基本二点だけでも、独学で試せます。

睡眠薬の種類と依存への備え

薬を使う場合、現在の睡眠外来で中心的に使われるのはオレキシン受容体拮抗薬です。スボレキサント(ベルソムラ)とレンボレキサント(デエビゴ)の二種類が代表で、覚醒を維持するオレキシンという物質の働きを抑えることで自然な眠りを促します。以前主流だったベンゾジアゼピン系と比べて依存リスクが低いとされており、高齢者にも処方されることが増えています。

もう一つの選択肢として、メラトニン受容体作動薬(ラメルテオン〈ロゼレム〉)があります。体内時計に作用し、特に寝つきを改善します。依存性はなく、効果が出るまで2〜4週間かかることがあります。

ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系(トリアゾラム、ゾルピデムなど)は即効性が高い反面、長期連用で依存や筋弛緩による転倒リスクが問題になりやすい薬です。高齢者には原則避けるよう国のガイドラインでも言及されています。

薬を処方される際には、「いつまで飲む予定か」「やめるときはどう減らすか」を初診時に確認しておくことをお勧めします。症状が改善しても突然中止せず、段階的に減薬するのが一般的です。

費用の目安

睡眠外来の受診にかかる費用(3割負担の概算)をまとめます。

受診内容費用の目安
初診(問診・身体診察)2,000〜4,000円
血液・心電図検査(初回)1,500〜3,000円
終夜睡眠ポリグラフ検査10,000〜20,000円
薬代(1か月分)1,500〜3,500円
CBT-I(専門外来・月2〜4回)2,000〜5,000円/回

初診と薬の処方だけなら、初回は4,000〜7,000円程度が目安です。睡眠時無呼吸の検査まで行うと、初回は費用が大きく増えることがあります。施設や検査内容によって異なるため、予約時に確認することをお勧めします。

※個人差があります。受診の判断は医師にご相談ください。

参考資料

  • 厚生労働省「標榜可能な診療科名に係る医療法施行令の改正について」─ 睡眠障害の標榜追加の経緯と告示日
  • 日本睡眠学会「認定医・認定施設の検索」─ 専門施設を都道府県別に探せる
  • 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」─ 不眠症の定義・原因・対処法の概要
眠れない夜が3か月続いているなら─睡眠障害科はどこにあって何をしてくれるのか — 健康 関連イラスト (どうする?)
Photo by Vitaly Gariev on Unsplash

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参考資料

  1. 厚生労働省「標榜可能な診療科名に係る医療法施行令の改正について」
  2. 日本睡眠学会「認定医・認定施設の検索」
  3. 厚生労働省 e-ヘルスネット「不眠症」

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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