相続した実家を売る時の空き家特例3,000万円控除、耐震改修や取り壊しなど押さえる条件

結論

被相続人が独居していた家屋を、耐震改修または取り壊して更地にしてから売る形が基本です。相続開始から3年目の12月末までに引渡しを終え、譲渡代金1億円以内で、市区町村の確認書を添えて確定申告で申請します。

どうする?編集部 · · 読了 約9分
目次(11項目)
  1. 3,000万円が引かれるのは相続税ではなく譲渡所得の側
  2. 対象になる家屋には昭和56年5月31日以前という縛りがある
  3. 「耐震改修して売る」か「取り壊して更地で売る」の二択
  4. 期限は相続開始から3年目の12月末まで
  5. 譲渡代金1億円を超えると全体が対象外
  6. 相続人が3人以上の場合は控除が2,000万円に縮む
  7. 老人ホームに入居していた期間はどう扱われるか
  8. 手続きの流れと自治体で取る「確認書」
  9. 使えないと分かった時に他に検討できる控除
  10. 期限ぎりぎりで動く時の実務手順
  11. 相談先と費用感

実家を空き家のまま持ち続けるか、そろそろ売るかで迷っているご遺族から、この控除について聞かれる場面が増えてきました。空き家特例は、亡くなった親が住んでいた家を相続した子などが売る際に、譲渡所得から最大3,000万円を差し引ける仕組みで、相続税とは別建てで所得税・住民税に効きます。家屋を耐震改修して売るか、取り壊して更地で売るかのいずれかが求められ、期限や金額の縛りも重なります。売却を不動産会社と進める前に、市区町村の担当窓口と国税庁のタックスアンサーを一度確認しておくと、手取りの差が数百万円動く場面もあります。

3,000万円が引かれるのは相続税ではなく譲渡所得の側

相続税の話と混同されがちですが、この控除は所得税・住民税の側の仕組みです。実家を相続で受け継いだ人が、その後売却したときに発生する譲渡所得(売却価格から取得費と譲渡費用を引いた金額)から、最大3,000万円までを差し引けます。取得から5年超で長期譲渡になれば所得税・住民税を合わせて譲渡益に約20%、5年以内の短期譲渡なら約39%が課される計算構造なので、控除が満額きくと最大で600万円台の税負担を回避できる規模です。

制度の正式名称は「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」で、国税庁のタックスアンサーNo.3306に詳しい説明があります。租税特別措置法35条3項が根拠条文です。平成28年に時限措置として作られた仕組みですが、その後の税制改正で対象範囲や要件が細かく変わっているので、5年前に調べた時の記憶で動くと足元をすくわれます。

対象になる家屋には昭和56年5月31日以前という縛りがある

制度の入口で最初に引っかかるのが、家屋の建築時期です。空き家特例が使えるのは、昭和56年5月31日以前に建築された建物に限られます。この日を境に建築基準法の新耐震基準が始まっており、旧耐震のまま残っている家屋を市場に流通させたくない、というのが制度の趣旨だからです。

昭和56年6月以降に建った実家は原則として対象外で、たとえ古びていても新耐震基準で建てられた家屋は制度の枠外に置かれます。増築や大規模リフォームで見た目が新しくなっていても、当初の建築年で判定されます。市区町村で発行する建築確認通知書の日付や、登記記録の新築年月日を先に確認しておきます。

もうひとつの落とし穴が、区分所有マンションが原則対象外だった点です。制度の想定は木造の戸建てで、共有部分を持つマンションは制度の枠外に置かれていました。令和6年1月1日以降に売却する場合はマンションも対象に含める形へ改正されたので、相続開始のタイミングと売却のタイミングを、それぞれ最新のルールで確かめる必要があります。

「耐震改修して売る」か「取り壊して更地で売る」の二択

家屋を残したまま売る場合は、売主側で耐震改修を済ませ、耐震基準に適合していることを確認したうえで買主に引き渡す形が要件になります。耐震診断は数万円台から、改修工事は木造戸建てで100〜200万円台のレンジが目安です。工務店に見積もりを取ると、屋根の軽量化や壁の補強、基礎の追加といった内容が家屋の状態に応じて組み合わされます。

取り壊して更地で売る場合は、買主に引き渡すまでに解体を終えている必要があります。木造家屋の解体費用は坪単価3〜5万円が相場で、30坪の家屋なら100〜150万円のレンジに収まる例が多いです。廃材にアスベストが含まれる場合や、重機の入りにくい住宅密集地では、これより上振れします。

以前は「耐震改修または取り壊し」を売主が済ませることが原則要件でしたが、令和6年1月1日以降の売却からは、売却後に買主が耐震改修や取り壊しを行うことが確実な場合も対象に含まれる形に緩和されました。売買契約に「引渡後の取り壊しが確実」と明記する運用が広がっており、売主側の解体費用が浮くケースが出てきています。手取りが数十万円変わる話なので、契約条件を詰める段階で不動産仲介会社と確認するのが安全です。

期限は相続開始から3年目の12月末まで

制度の中で最も間違いやすいのが、期限の数え方です。「相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで」に売却の引渡しを終える必要があります。四十九日や相続登記の期日ではなく、亡くなった日そのものが起点です。

たとえば親が2023年3月に亡くなった場合、3年後は2026年3月ですが、その3月を含む年、つまり2026年12月31日までに売却が完了していれば対象になります。売買契約の締結日ではなく、代金決済と所有権移転登記が完了する引渡し日で判定される点も見落としやすい部分です。契約から引渡しまで1〜3か月かかることも多く、期限ぎりぎりで契約を結ぶと引渡しが翌年にずれ込んで対象外になる事故が出ます。

全体の適用期限として、令和9年12月31日までに行う売却が制度の対象という時限措置もかかっています。制度そのものは何度か延長されてきましたが、いつまで続くかは政策判断次第です。長く空き家のまま置くほど制度の網から外れるリスクは上がります。

譲渡代金1億円を超えると全体が対象外

見落とされがちな上限が、譲渡代金1億円の壁です。売却価格が1億円を超えると、控除は使えません。都市部の一戸建てでは、土地の評価が高い立地で1億円超えのラインに触れる家庭もあります。

厄介なのが、共有名義や分筆売却をした場合の合算判定です。相続人が3人で1/3ずつ共有していて、それぞれの持分の売却合計が1億円を超えると、全員が対象外になります。1年目に一部を売り、翌年に残りを売った場合も、被相続人居住用家屋を引き継いでから3年目末までの売却合計で判定されます。

隣地との一体売却で1億円を超えるケースも要注意です。実家の敷地と隣接する空き地を合わせて一体で買い手に渡す場合は、合計金額で判定されます。分けて売却する道もありますが、買い手が付きにくくなる場合もあるので、税負担と売却スピードを見比べて決めます。

相続人が3人以上の場合は控除が2,000万円に縮む

令和6年1月1日以降の売却からは、相続人が3人以上の場合、控除額が1人あたり2,000万円に減額される改正が入りました。従来は誰が引き継いでも一律3,000万円でしたが、大人数で分けたときの節税効果が過大になる、というのが改正の趣旨です。

相続人が4人で共有持分を売却した場合、1人あたり2,000万円までしか控除されないので、4人合計で最大8,000万円が上限になります(従来なら3,000万円×4人=1億2,000万円まで可能でした)。相続人が1〜2人までなら従来通り1人あたり3,000万円のままです。

きょうだいの多い家庭では、誰が実家を相続するかの段階で使える控除が変わる形になりました。売却の見込みがある場合、一次の遺産分割協議の時点で、共有相続にするか代表者の単独名義で受けるかまで見通しておくと家族間で納得感を得やすくなります。単独名義なら控除3,000万円をフルに使えますが、代償金の支払いが発生するのでキャッシュフローとの兼ね合いで判断します。

老人ホームに入居していた期間はどう扱われるか

被相続人が要介護で老人ホームや介護施設に入居し、亡くなるまで自宅に戻れなかった、というケースは少なくありません。制度の入口では「被相続人が相続開始の直前まで居住していた」ことが求められるので、施設入居中は形式的に自宅を離れている状態です。

平成31年度の税制改正で、要介護認定を受けて特別養護老人ホームや有料老人ホームなどに入居していた場合も、要件を満たせば対象に含める形へ緩和されました。要介護または要支援認定を相続開始の直前に受けていたこと、老人福祉法・介護保険法上の施設に入居していたこと、入居後に自宅を事業・貸付・第三者の居住用に使っていなかったこと、が条件です。介護施設の入居契約書や要介護認定通知書が要件の証明資料になり、施設入居後に自宅を賃貸へ出したり親戚が住んだりした期間があると対象外に振れやすいので、判断が微妙な時は税理士に事前確認してもらうのが安全です。

手続きの流れと自治体で取る「確認書」

制度を実際に使うには、市区町村が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」を取ることが必要です。自治体の建築指導課や資産税課などが窓口で、相続開始直前まで被相続人が独居していたこと、貸付や事業に使われていなかったこと、耐震改修や取り壊しの状況が制度の要件を満たすことを確認する書類になります。

申請には、被相続人の住民票除票、登記事項証明書、電気・ガス・水道の閉栓を示す書類、家屋の写真、耐震基準適合証明書または取り壊し後の閉鎖登記事項証明書などが必要です。書類の名前は自治体ごとに微妙に違うので、売却が固まってきた段階で、実家がある市区町村の窓口に一度電話して必要書類のリストをもらうと二度手間になりません。発行までに1〜2週間かかる自治体が多い印象です。

確認書が手に入ったら、売却翌年の2月16日から3月15日までの確定申告で、譲渡所得の内訳書とセットで税務署に提出します。売買契約書の写し、耐震基準適合証明書、取り壊し費用の領収書なども添付書類です。相続登記が未了のままでは確認書の要件を満たすことを証明しづらいので、売却の前に登記を済ませておくのが実務上の順序になります。相続登記自体も令和6年4月から義務化されているので、実家の相続と売却が絡む場面では並行して進めます。

使えないと分かった時に他に検討できる控除

対象外だった場合でも、譲渡所得を減らせる別の道がゼロというわけではありません。相続税を申告した相続人が、相続開始から3年10か月以内に相続財産を売却した場合は、相続税の一部を取得費に加算できる「相続税の取得費加算」が使えます。相続税を実際に支払った家庭であれば、こちらの方が有利になる例もあります。

長期的に売却の見込みがあるのに空き家のまま維持する方向は避けたほうがよく、老朽化して特定空き家に指定されると住宅用地の特例が外れて固定資産税が3〜4倍に跳ね上がる場面もあります。3年目末の期限を意識しつつ、早めに方針を固める方が結果的に手取りが残ります。

期限ぎりぎりで動く時の実務手順

相続から2年半を過ぎたあたりで「そろそろ売却を」と動き出すご家族には、逆算スケジュールをまず作ってもらいます。売却の引渡しから逆算して、契約締結まで1〜2か月、買い手を探す媒介期間に2〜4か月、耐震改修または取り壊しに1〜3か月、市区町村の確認書発行に1〜2週間と積み上げると、実質半年から10か月の準備期間が要ります。期限まで残り1年を切っている場合は、更地で売る前提で解体業者の見積もりを先に取り、不動産会社と媒介契約の準備を並行して進める動き方が現実的です。

相続登記が未了のまま期限が迫っている場合は、司法書士に急ぎで登記手続きを依頼します。相続人が複数いて協議がまとまらない場合、代表相続人が単独で法定相続分の登記だけ先に済ませ、あとから修正する道もあります。司法書士の判断が必要な部分なので、期限まで残り3か月を切ったら選択肢を絞る動きに切り替えます。

相談先と費用感

税務署の資産課税部門と、地元の税理士会が主催する相続無料相談は、初回の情報収集で使いやすい相談先です。譲渡所得の確定申告そのものを税理士に依頼する場合、家屋1件の売却で15〜25万円が費用の目安で、売却価格が大きいケースや複数の相続財産が絡む案件はもう少し上振れします。

市区町村の窓口は書類発行の実務が中心なので、対象になるかどうかの最終判断は税理士か税務署の資産課税担当に確認するのが確実です。相続登記や売買契約の段階では司法書士と不動産仲介会社が絡みます。税理士・司法書士・仲介会社の三者が同じ売却スケジュールを共有できる状態にしておくと、期限管理がぶれません。制度の期限や対象範囲は改正が続いているので、相続開始から3年目の12月末という締切が近い家庭ほど、動き出しを早めに詰める方が結果的に手取りが残ります。

相続した実家を売る時の空き家特例3,000万円控除、耐震改修や取り壊しなど押さえる条件 — お金 関連イラスト (どうする?)
Photo by DSXST on Unsplash

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参考資料

  1. 国税庁 タックスアンサー No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例
  2. 国土交通省 空き家の発生を抑制するための特例措置
  3. 国税庁 タックスアンサー No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
  4. 国税庁 令和5年度税制改正の解説(空き家特例の見直し)

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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