2026年4月1日から、土地や建物の所有者として登記されている人は、住所や氏名が変わった日から2年以内に、登記の住所・氏名を変える登記(住所等変更登記)を申請する義務を負うようになりました。根拠は不動産登記法第76条の5です。義務化の前に引っ越しや結婚をしていて、登記が古いままになっている人も対象で、こちらは2028年3月31日までが期限です(法務省)。
正当な理由がないのに申請を怠ると、5万円以下の過料の対象になります。ただし、国内に住む個人なら、無料の「検索用情報の申出」を一度しておけば、法務局が住所や氏名の変更を確かめて職権で登記をする「スマート変更登記」を使えます。この記事では、義務の中身、過料の手順、スマート変更登記の流れ、自分で申請する場合の費用と書類を、法務省と法務局の案内で確かめます。
対象になる人と期限
義務を負うのは、不動産(土地・建物)の所有権の登記名義人、つまり登記簿に所有者として載っている人です。法務省のQ&Aは、住所等変更登記の例として次の二つを挙げています。
- 転勤による引っ越しなどで住所が変わったときに、登記簿の住所を変える登記
- 結婚などで氏名が変わったときに、登記簿の氏名を変える登記
法人も同じで、本店移転や社名変更が対象です(名古屋法務局)。
期限は、変更があった時期で二つに分かれます。
- 2026年4月1日以降の変更:変更の日から2年以内
- 2026年4月1日より前の変更で、登記していないもの:2028年3月31日まで(民法等の一部を改正する法律附則第5条第7項)
住宅ローンを組んで家を買い、その後に転勤で別の土地に移った人や、結婚で姓が変わった人は、登記簿の住所・氏名が古いままになっていることがあります。まずは登記事項証明書で、登記簿の住所・氏名が今と同じかを見ておくと、自分が対象かどうかがわかります。
過料は「催告のあと」
過料の金額は5万円以下で、通知を受けた裁判所が要件に当たるかを判断して決めます(法務省Q&A)。法務省は、登記官が義務違反を知っても、ただちに裁判所へ通知するわけではないとしています。手順は次のとおりです。
- 登記官が義務違反を把握したら、期限を定めて登記をするよう催告する(催告書を送る)
- 期限内に登記や申出がなく、正当な理由も認められないときに、登記官が裁判所に通知する
- 通知を受けた裁判所が、過料を科すかを判断する
催告のきっかけになる場面
法務省が例として挙げているのは、次の二つです。
- 所有者が建物の表示に関する登記などを申請したとき、申請書の住所・氏名が登記記録と合っていなかった
- 住基ネットへの照会で住所等の変更がわかり、スマート変更登記をするかどうかの意思確認通知を受け取ったのに、拒否した、または期限までに回答しなかった
二つ目は見落としやすい点です。スマート変更登記の対象になっていても、届いた意思確認通知に答えなければ、催告の対象になり得ます。
「正当な理由」と認められる例
法務省は、次のような事情があれば、一般に正当な理由があると認めるとしています。これ以外の場合も、個別の事情に応じて判断するとしています。
- 検索用情報の申出(法人は会社法人等番号の登記)をしているが、職権による変更登記がまだされていない
- 市町村合併など行政区画の変更で住所が変わった
- 本人に重病などの事情がある
- DV被害者などで、避難を余儀なくされている
- 経済的に困窮していて、登記の費用を負担できない
一つ目があるので、検索用情報の申出を済ませておけば、職権登記を待っている間に義務違反を問われる心配はなくなります。法務省も、申出をしておけば義務違反に問われることがなくなると案内しています。
スマート変更登記の流れ
スマート変更登記は、所有者が自分で申請しなくても、法務局が住基ネットの情報で変更を確かめ、本人の了解を得て職権で変更登記をする仕組みです(法務省「スマート変更登記について」)。個人の場合の流れは次のとおりです。
- 検索用情報(氏名、氏名の振り仮名、住所、生年月日、メールアドレス、国籍等)を法務局に申し出る
- 法務局が、2年に1回程度、住基ネットに照会して住所・氏名の変更を確かめる
- 変更があった人に、意思確認通知を送る。メールアドレスを届けた人には電子メールで、届けていない人には住基ネットで確認した最新の住所に封書で届く
- 通知が送られてから1か月以内に、通知のリンクや二次元コードから回答する(書面の通知なら、書面に記入して持参・郵送もできる)
- 不動産を管轄する法務局が審査して登記をする。メールアドレスを届けた人には完了の通知がメールで届く
2026年度の対象は、2026年3月31日までに法務局で検索用情報の登録が完了した人で、意思確認通知は2026年12月中旬以降、順次送られます。4月1日以降に登録が完了した人は、2027年度以降の対象になります(法務省Q&A)。
検索用情報の申出のしかた
すでに所有者として登記されている人がする申出(単独申出)には、次の特徴があります(法務省「検索用情報の申出について」)。
- 押印・電子署名は不要。「かんたん登記・供託申請」を使えば、Webブラウザだけで手続きできる
- 添付書類は、多くの場合、運転免許証やマイナンバーカード(表面のみ)などの本人確認書類の写しだけ
- 登録免許税などの費用はかからない
オンラインで初めて手続きする人は、登記・供託オンライン申請システムの「申請者情報の登録」(無料)が先に必要です(名古屋法務局)。書面で申し出る場合は、記載例と様式を見て申出書を作り、不動産を管轄する法務局に出します。管轄の違う不動産を複数持っていれば、そのうちどれかを管轄する法務局にまとめて申し出られます。
登記簿の住所・氏名から今の住所・氏名までの変更の経緯が住基ネットで確かめられない場合は、戸籍の附票や戸籍の証明書、本籍の記載のある住民票の写しなどが必要です。法務省によると、変更の日が2010年(平成22年)10月5日以降なら、原則としてこうした書類は不要です。また、2026年10月5日以降の申出では国籍等も申し出ることになり、日本国籍の人は本籍地が記載された住民票の写しや戸籍の附票の写しが証明書類の例として挙がっています。
対象になるのは申出をした不動産だけです。ほかにも不動産を持っている場合は、その分も申し出る必要があります。
スマート変更登記が向かない場面
法務省のQ&Aから、注意点を拾います。
- 売却などで急ぐとき。 スマート変更登記は法務省が決めたスケジュールで行うため、通知のとき以外に個別に頼むことはできません。急ぐ場合は自分で申請します。
- 手続き中は登記事項証明書が取れない。 回答後、管轄の法務局が通知を受け付けてから登記が終わるまで、その不動産の登記事項証明書等は取得できず、手続きを止めることもできません。
- 登記される住所は照会した時点のもの。 照会のあとにもう一度引っ越していると、最新ではない住所で登記されることがあります。その場合は次回(約2年後)に直せるとされています。
- 海外に住んでいる人は対象外。 住基ネットで確認できないためです。海外にいるときに申し出た人も対象外で、帰国後に改めて申し出れば対象になります。
自分で申請する場合
自分で住所等変更登記を申請する場合、法務局の記載例では、引っ越しや結婚による変更の申請書に次のものを付けます。
- 登記原因証明情報:戸籍の証明書や、本籍の記載のある住民票の写しなど。登記簿上の住所・氏名、今の住所・氏名、それぞれの変更日がわかるもの。足りなければ戸籍の附票の写しなどを加える。住民票の写しはマイナンバーが載っていないもの
- 登録免許税:土地または建物1個につき1,000円。記載例は土地1筆と建物1棟で2,000円です
住所変更をオンラインで申請する場合は、住民票コードを提供すれば添付情報が不要になり、オンラインで完結できます。ただし、住民票コードで登記簿の住所からのつながりを証明できないときは、住民票の写しなどの原本を法務局に郵送か持参します。オンライン申請にはマイナンバーカードの電子証明書とICカードリーダライタが要ります(法務局「転勤等で引っ越した」)。
申請書の作り方は、各法務局の登記手続案内(予約制、1回20分以内)で聞けます。電話、窓口、ウェブ会議から選べます。申請の代理や書類作成を仕事として引き受けられるのは司法書士と弁護士です(法務省)。
確認の順番
- 登記事項証明書などで、登記簿の住所・氏名が今と同じかを確かめる
- 違っていれば、2026年4月より前の変更なら2028年3月31日まで、それ以降の変更なら変更日から2年以内が期限
- 売却や借り換えの予定がなく、国内に住んでいるなら、検索用情報の申出(無料)をする
- 意思確認通知が届いたら1か月以内に回答する
- 急ぐとき、海外に住んでいるときは、自分で申請する(登録免許税は土地または建物1個につき1,000円)
この記事で確認できなかったこと
2026年11月7日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- マンションの敷地権など、登録免許税を数えるときの個数の細かい扱い。
- 2027年度以降のスマート変更登記の対象者と意思確認通知の時期(法務省は決まり次第知らせるとしています)。
- 催告で定められる「相当の期間」の長さ。
- 意思確認通知に1か月以内に回答できなかった場合に、次回の照会まで待てばよいのか、ほかの手続きが要るのか。
参考資料
- 法務省 住所等変更登記の義務化特設ページ — 義務化のポイント(2年以内、施行前の変更は2028年3月末まで)
- 法務省 住所等変更登記の義務化について — 根拠条文、過料通知の手順、催告の端緒、正当な理由
- 法務省 住所等変更登記の義務化に関するQ&A — 過料の流れ、スマート変更登記の時期と注意点
- 法務省 スマート変更登記について — 個人の流れ、意思確認通知と1か月の回答期限、海外居住者
- 法務省 検索用情報の申出について(職権による住所等変更登記関係) — 申出の方法、添付書類、費用がかからないこと
- 名古屋法務局 住所等変更登記の義務化・スマート変更登記の案内 — 法人も対象、2年に1回以上の照会、申請者情報の登録
- 法務局 登記されている住所・氏名に変更があった方へ — 急ぐ場合は従来どおり申請
- 法務局 転勤等で引っ越した(所有者の住所変更の登記をオンライン申請したい方) — 住民票コードの提供、マイナンバーカードの電子証明書
- 法務局 登記名義人住所・氏名変更登記申請書の記載例 — 登記原因証明情報、登録免許税は1個につき1,000円