台風の進路予想と出発日が重なると、旅行会社からの連絡を待つべきか、自分からキャンセルすべきか迷います。確認したいのは、ツアーの催行状況と、取消料なしで解除できる条件の両方です。旅行会社がまだ中止を発表していなくても、約款の条件を満たせば旅行者から無料で解除できる場合があります。
訂正(2026年9月12日): 初版では、旅行会社が中止を決めた場合に限り取消料なしで解除できると記載しました。第16条第2項に基づく旅行者の解除権を正しく説明していなかったため、タイトル・要点・本文を修正しました。
旅行者から無料で解除できる条件と、旅行会社の中止判断は別です
以下は、標準旅行業約款の「募集型企画旅行契約の部」を使うツアーについての説明です。独自の認可約款を使う会社もあるため、まず自分の契約書面を確認してください。旅行者が旅行開始前に取消料なしで解除できる場合は、第16条第2項に定められています。台風に関係するのは、その第3号です。
天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の事由が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき。
台風が発生したというだけでは足りません。安全かつ円滑な実施が不可能になったか、そのおそれが極めて大きいかが条件です。一方、この条文には「旅行会社が中止を決定した場合に限る」とは書かれていません。
第17条第1項第7号は、旅行会社が旅行開始前に契約を解除する場合の規定です。こちらと旅行者の解除権を混同すると、「会社が中止しない限り、旅行者は必ず取消料を払う」という誤った説明になってしまいます。
旅行者から解除したいときは、欠航・運休の発表や現地の状況を伝え、「第16条第2項第3号に基づく取消料なしの解除に該当するか」を確認します。該当しないと案内されたら、その理由も記録してください。旅行会社との見解が違う場合に備え、契約書面と運行情報の発表日時を残しておくと、話を整理しやすくなります。
「危なそうだから」の自己判断は、国内なら最短で20日前から取消料
取消料なしで解除できる条件に当てはまらない場合は、第16条第1項と契約書面に基づく取消料がかかります。別表第一の国内旅行の上限は次のとおりで、旅行開始日の前日からさかのぼって数えます。貸切船舶を利用する旅行は別の規定です。
| 解除する日 | 取消料の上限(旅行代金に対して) |
|---|---|
| 20日前(日帰りは10日前)から8日前まで | 20% |
| 7日前から前々日まで | 30% |
| 前日 | 40% |
| 当日(出発前) | 50% |
| 出発後の解除、連絡なしの不参加 | 100% |
出発が9月20日なら、前日の19日を1日目と数え、7日目は9月13日、20日目は8月31日です。通常の取消料がかかる場合、9月13〜18日は上限30%の区分に入ります。
たとえば10万円のツアーで契約上の取消料が30%なら3万円、40%なら4万円です。表は上限なので、実際の率は申込時に受け取った契約書面で確認してください。
すでに通常の取消料を払ったあとでツアーが中止になっても、それだけで自動的に返金されるとは限りません。ただし、解除時点で無料解除の条件を満たしていたかは別の問題です。経緯を伝えずに「自己都合で取り消したから仕方ない」と諦めず、適用された条項と当時の状況を予約先に確認してください。
旅行会社が中止を決めたら、取消料なし・7日以内に全額
旅行会社が第17条七号で中止を決めると、旅行者に理由を説明したうえで契約が解除され、旅行代金は全額戻ります。払戻しの期限も第19条に決まっていて、旅行開始前の解除なら解除の翌日から起算して7日以内です。
クレジットカードで申し込んだ通信契約の場合は、旅行会社が同じ期限内に払戻額を通知し、カード会社の会員規約に従って返金されます。7日以内に口座へ入金されるという意味ではありません。通知が来ないときは、旅行会社の予約センターに解除日と予約番号を伝えて確認します。
中止の連絡は、電話・メール・予約サイトのマイページのいずれかで来ます。台風時は電話がつながりにくいので、申込時に登録したメールを当日まで見られるようにしておきます。
出発してから行程が飛んだ部分は、取消料なしで解除できる。ただし実費は引かれる
1日目は予定どおりで、2日目から台風で観光が全部中止になった、というのもよくある形です。この場合、旅行開始後であっても、自分の責任でなく受けられなくなったサービスの部分については、第16条第3項により取消料なしで契約を解除できます。
払い戻される額には注意が要ります。旅行会社の責任ではない台風の場合、その部分の旅行代金から、宿や交通機関に対してすでに払った、またはこれから払わなければならない取消料や違約料が差し引かれます。「2日目分がまるごと戻る」とは限らず、宿が当日キャンセル扱いで違約金を請求してくれば、その分は減ります。払戻しの期限は、旅行終了日の翌日から起算して30日以内です。
添乗員付きのツアーなら、行程変更や打ち切りは添乗員が現地で説明します。フリープランの場合は、旅行会社の緊急連絡先に自分から連絡し、「受けられなくなったサービス」を具体的に伝えて記録に残しておきます。
宿だけ・航空券だけの予約は約款が別。ツアーの条文は使えない
ここまでは募集型企画旅行、つまり旅行会社が企画して募集したパッケージツアーに限った話です。同じ「台風で行けない」でも、予約の形が違うと根拠になる約款が変わり、免除を判断する相手も変わります。
| 予約の形 | 最初に確かめること |
|---|---|
| 募集型企画旅行のツアー | 自分の契約約款。旅行者の無料解除の条件と旅行会社の中止判断を分けて確認 |
| 航空券・鉄道のきっぷを個別に予約 | 予約した運賃・きっぷの条件と、その便・区間に出ている特別な取扱い |
| 宿泊のみを予約 | 予約した宿泊プランの取消条件と、悪天候時の対応 |
ツアーが中止になっても、別に予約した前泊の宿などが一緒に取り消されるわけではありません。個別の予約先にも連絡し、取消しと返金の条件を確かめてください。旅行会社に手配だけを頼んだ「手配旅行」も、募集型企画旅行とは契約の種類が違います。
旅行会社に聞くのは、催行の時期と取消条件の両方
標準旅行業約款には、台風の場合に「出発の何日前までに中止を知らせる」という一律の期限はありません。第17条第3項の通知期限は最少催行人員に達しない場合のもので、台風時の期限とは別です。
予約番号を手元に置き、次の点を予約先に確認してください。
- このツアーの催行可否は、いつまでに、どの連絡手段で知らせてもらえるか
- 今の運行情報や現地の状況で、第16条第2項第3号に基づく無料解除に該当するか。該当しない場合はその理由
- 中止になった場合、払戻しはどの方法で、いつ戻るか
- 無料解除の条件に該当しない場合、取消料は契約書面のどの率になるか
- 日程を後ろにずらす変更に応じてもらえるか。その場合の費用はいくらか
日程変更ができるか、追加費用がいくらかは、予約内容と会社の対応によります。無料で変更できると決めつけず、金額を確認してから依頼します。
電話の内容は、日時・担当者名・言われたことをメモしておきます。あとで「そんな案内はしていない」となったときに、消費生活センターに相談する際の材料になります。
今日やることを順に
取消料を避けるために、危険な移動をする必要はありません。安全の確保を優先し、契約と連絡の記録を残してください。
まず、契約書面で予約の種類と取消条件を確認し、運休や現地の情報を保存します。次に予約先へ連絡して、催行状況、無料解除の条件、自分の予約に適用される扱いを聞きます。予約画面で取り消す前に条件を確認できれば、通常の取消しとの行き違いを減らせます。
解除したら、解除日・適用条項・払戻額を確認してください。出発後に受けられなくなったサービスがあれば、添乗員か緊急連絡先に具体的に伝えます。旅行会社と取消料の扱いで折り合わない場合は、契約書面と連絡記録を用意して消費生活センターなどに相談する方法もあります。
宿や航空券を別に取っている場合は、それぞれの窓口に同じ順で連絡します。旅行会社が中止を決めても、別契約の宿には自動では伝わりません。
参考にした資料
観光庁が国土交通省告示として公開している標準旅行業約款のうち、募集型企画旅行契約の部の第16条・第17条・第19条と別表第一を原文で確認しました。取消料の率は約款上の上限で、実際に適用されるのは契約書面に明示された率です。旅行会社が認可を受けて独自の約款を使っている場合は、条番号や内容が異なることがあります。