台風の進路予想に自分の出発日が入ってきて、申し込んだツアーをどうするか迷っている方からの相談が、毎年この時期に増えます。結論を先に書くと、取消料なしでやめられるかどうかは天災かどうかで決まるのではなく、旅行会社が「実施できない」と判断したかどうかで決まります。自分から先に取り消せば、台風が理由でも通常の取消料がかかります。まず旅行会社に「催行判断はいつ出るか」を聞き、その返事を軸に動いてください。
免除の条件は約款に一文で書いてある。決めるのは旅行会社
パッケージツアー、約款の言葉では募集型企画旅行の契約は、観光庁が告示する標準旅行業約款をほぼそのまま使っています。大手でも中小でも条文は同じで、旅行者側から取消料なしで解除できる場合は第16条第2項に五つ並んでいます。台風に関係するのはその三号です。
天災地変、戦乱、暴動、運送・宿泊機関等の旅行サービス提供の中止、官公署の命令その他の事由が生じた場合において、旅行の安全かつ円滑な実施が不可能となり、又は不可能となるおそれが極めて大きいとき。
後半を読み落とすと判断を誤ります。「天災地変が生じた」だけでは足りず、「安全かつ円滑な実施が不可能となるおそれが極めて大きい」ところまで行って初めて免除になります。そして、そのおそれが大きいかどうかを評価するのは、契約の相手方である旅行会社です。旅行者が進路予想図を見て「危なそうだ」と感じただけでは、条文の要件を満たしません。
同じ文言は第17条第1項七号にもあり、こちらは旅行会社が自分から契約を解除する場合の根拠です。実務ではこの二つが一体で動きます。旅行会社が「不可能となるおそれが極めて大きい」と判断すればツアー全体を中止し、その時点で参加者全員が取消料なしになります。逆に旅行会社が催行を決めているうちは、三号の状態にはなっていません。
つまり、免除の入口は一つです。旅行会社が中止を決めること。取消料を払いたくないなら、その判断が出るまで自分からは解除しない。この記事でいちばん大事な一行です。
「危なそうだから」の自己判断は、国内なら最短で20日前から取消料
旅行会社の判断より先に自分で取り消すと、第16条第1項の通常の解除になり、別表第一の取消料が契約書面に書かれた率でかかります。国内旅行の上限は次のとおりで、いずれも旅行開始日の前日から数えます。
| 解除する日 | 取消料の上限(旅行代金に対して) |
|---|---|
| 20日前(日帰りは10日前)から8日前まで | 20% |
| 7日前から前々日まで | 30% |
| 前日 | 40% |
| 当日(出発前) | 50% |
| 出発後の解除、連絡なしの不参加 | 100% |
数え方は「旅行開始日の前日から起算してさかのぼって」です。出発が9月20日なら前日の19日を1日目と数え、7日目は9月13日、20日目は8月31日にあたります。9月13日以降に自分から取り消すと30%の区分に入ります。
台風の進路がはっきりするのは接近の2〜3日前が多く、その時点で自分から取り消せば30%、前日なら40%です。10万円のツアーなら3〜4万円を払ってやめることになります。約款上の率は「以内」なので旅行会社によってはこれより低い設定もありますが、申込時に受け取った契約書面や予約画面に書かれた率が実際の適用値です。
「台風で行けなくなったのだから、あとで返してもらえるはず」と期待する人が多いのですが、旅行者側から解除した時点で契約は終わっています。その翌日に旅行会社がツアー中止を決めても、先に払った取消料が自動で戻る仕組みは約款にありません。個別に返してくれる会社もあり、頼んでみる価値はありますが、権利として請求できるものではないと考えて動くほうが安全です。
旅行会社が中止を決めたら、取消料なし・7日以内に全額
旅行会社が第17条七号で中止を決めると、旅行者に理由を説明したうえで契約が解除され、旅行代金は全額戻ります。払戻しの期限も第19条に決まっていて、旅行開始前の解除なら解除の翌日から起算して7日以内です。
クレジットカードで申し込んだ通信契約の場合は、旅行会社が同じ期限内に払戻額を通知し、カード会社の会員規約に従って返金されます。カードの締め日をまたぐと明細に反映されるのは翌月以降になりますが、旅行会社側の手続きは7日以内に終わっているはずです。通知が来ないときは、旅行会社の予約センターに解除日と予約番号を伝えて確認します。
中止の連絡は、電話・メール・予約サイトのマイページのいずれかで来ます。台風時は電話がつながりにくいので、申込時に登録したメールを当日まで見られるようにしておきます。
出発してから行程が飛んだ部分は、取消料なしで解除できる。ただし実費は引かれる
1日目は予定どおりで、2日目から台風で観光が全部中止になった、というのもよくある形です。この場合、旅行開始後であっても、自分の責任でなく受けられなくなったサービスの部分については、第16条第3項により取消料なしで契約を解除できます。
払い戻される額には注意が要ります。旅行会社の責任ではない台風の場合、その部分の旅行代金から、宿や交通機関に対してすでに払った、またはこれから払わなければならない取消料や違約料が差し引かれます。「2日目分がまるごと戻る」とは限らず、宿が当日キャンセル扱いで違約金を請求してくれば、その分は減ります。払戻しの期限は、旅行終了日の翌日から起算して30日以内です。
添乗員付きのツアーなら、行程変更や打ち切りは添乗員が現地で説明します。フリープランの場合は、旅行会社の緊急連絡先に自分から連絡し、「受けられなくなったサービス」を具体的に伝えて記録に残しておきます。
宿だけ・航空券だけの予約は約款が別。ツアーの条文は使えない
ここまでは募集型企画旅行、つまり旅行会社が企画して募集したパッケージツアーに限った話です。同じ「台風で行けない」でも、予約の形が違うと根拠になる約款が変わり、免除を判断する相手も変わります。
| 予約の形 | 根拠になる約款 | 免除を決めるのは | 免除の目安 |
|---|---|---|---|
| パッケージツアー | 標準旅行業約款(募集型企画旅行の部) | 旅行会社 | 旅行会社が中止を決めたとき |
| 航空券のみ | 各航空会社の運送約款 | 航空会社 | 対象便に指定された時点。欠航確定前でも手数料なし |
| 新幹線のきっぷのみ | JR各社の旅客営業規則 | JR | 運休が決まったきっぷは手数料なしで全額 |
| 宿のみ | 各宿泊施設の宿泊約款 | 宿 | 台風は免除事由に書かれていないことが多い。個別判断 |
航空券と新幹線は、それぞれの会社が対象便や運休区間を公表した時点で手数料なしの扱いになるので、ツアーより判断が早く出ます。詳しい手順はこの記事の下にある関連記事に分けています。
宿の扱いがいちばんあいまいです。宿泊約款は宿ごとに違い、交通機関の運休を免除事由に挙げていない施設が多くあります。実際には台風での交通途絶を理由にした連絡に応じてくれる宿も少なくありませんが、それは約款上の権利ではなく宿の好意です。行けないと分かった時点で電話を入れ、「運休になった場合の扱い」を先に聞いておくと、当日のやり取りが短くなります。
旅行会社に宿や航空券の手配だけを頼んだ手配旅行も、募集型の条文は使えません。この場合の取消料は、旅行会社の取扱料金に加えて、宿や航空会社それぞれの規定で決まります。
催行判断はいつ出るか。前日の夜まで待たされることが多い理由と、聞き方
免除の入口が「旅行会社の中止判断」だとすると、次に困るのはその判断がいつ出るかです。約款には期限が書かれていません。旅行会社は運送・宿泊機関の運休や休業が確定するのを待って判断します。航空会社の対象便指定や鉄道の計画運休発表が出てからになるので、たいてい前日の午後から夜までずれ込みます。
待つ側としては、判断を急かすより「判断の時期」を聞くほうが確実です。予約センターや店舗に電話して、次のように聞きます。
- このツアーの催行可否は、いつまでに、どの連絡手段で知らせてもらえるか
- 中止になった場合、払戻しはどの方法で、いつ戻るか
- 中止にならず自分が行かない場合、取消料は契約書面のどの率になるか
- 日程を後ろにずらす変更に応じてもらえるか。その場合の費用はいくらか
四つ目は意外と通ります。旅行会社にとっても、中止で全額返すより日程変更で契約を残すほうが望ましいので、台風接近時には変更手数料なしの振替を案内する会社があります。これも約款が保証するものではなく会社ごとの運用ですが、聞かなければ出てこない選択肢です。
電話の内容は、日時・担当者名・言われたことをメモしておきます。あとで「そんな案内はしていない」となったときに、消費生活センターに相談する際の材料になります。
今日やることを順に
進路予想に出発日が入った時点で、やることは多くありません。順番だけ間違えなければ、取消料を払わずに済む可能性を残せます。
まず、申込時の契約書面を開いて、取消料の率と緊急連絡先を確かめます。紙で受け取っていなければ、予約確認メールや予約サイトのマイページに同じ内容があります。次に旅行会社に電話かメールで、催行判断の時期と連絡手段を聞きます。ここまでで自分から解除しないこと。
台風の進路がずれて催行が決まったなら、行くか、取消料を払ってやめるかを自分で決めます。中止が決まったら、あとは払戻しの通知待ちです。7日たっても来なければ問い合わせます。出発後に行程が飛んだら、受けられなかったサービスを添乗員か緊急連絡先に伝え、記録を残します。
宿や航空券を別に取っている場合は、それぞれの窓口に同じ順で連絡します。旅行会社が中止を決めても、別契約の宿には自動では伝わりません。
参考にした資料
観光庁が国土交通省告示として公開している標準旅行業約款のうち、募集型企画旅行契約の部の第16条・第17条・第19条と別表第一を原文で確認しました。取消料の率は約款上の上限で、実際に適用されるのは契約書面に明示された率です。旅行会社が認可を受けて独自の約款を使っている場合は、条番号や内容が異なることがあります。