2026年10月1日に、ビール系飲料の酒税が一本にまとまります。気をつけたいのは、値段の動く向きが棚の場所で逆になることです。ビールは350ml缶で9.1円下がり、第三のビールと麦芽比率の低い発泡酒は7.26円上がります。缶チューハイも上がる側。つまり9月のうちに買っておく意味があるのは上がる側だけで、ビールはむしろ待つほうが得になります。まずは冷蔵庫にある缶を1本手に取って、側面の品目表示が「ビール」なのかどうかを見てください。
缶1本でいくら変わるのか
酒税は「1キロリットルにつきいくら」という形で決まっていて、缶の容量にそのまま比例します。よく買う350ml缶に直すと、こうなります。
| 区分 | 現在 | 10月1日から | 差 |
|---|---|---|---|
| ビール | 63.35円 | 54.25円 | −9.1円 |
| 発泡酒(麦芽25%以上50%未満) | 54.25円 | 54.25円 | 変わらず |
| 発泡酒(麦芽25%未満)・第三のビール | 46.99円 | 54.25円 | +7.26円 |
| チューハイなど(その他の発泡性酒類) | 28円 | 35円 | +7円 |
500ml缶なら、ビールが90.5円から77.5円へ13円下がり、第三のビールは67.13円から77.5円へ10.37円上がります。チューハイは40円から50円へ。
これは酒税だけの金額です。消費税は酒税を含んだ価格にかかるので、レジで払う差はここから1割増えます。350ml缶の第三のビールなら約8円、ビールなら約10円が目安になります。
条文の数字も書いておきます。発泡性酒類の税率はいま1キロリットル181,000円で、2026年10月1日から155,000円。麦芽比率25%未満の発泡酒と第三のビールは134,250円から155,000円へ。チューハイなど「その他の発泡性酒類」は80,000円から100,000円へ上がります。ビールも発泡酒も第三のビールも、10月からは同じ155,000円で並びます。
そろえる作業は2017年に決まっていて、今回が3回目
一本化は急に決まった話ではありません。2017年(平成29年)の税制改正で、3回に分けて動かすことが法律に書き込まれています。
| 時期 | ビール | 第三のビール | チューハイ等 |
|---|---|---|---|
| 2020年10月〜 | 200,000円 | 108,000円 | 80,000円 |
| 2023年10月〜 | 181,000円 | 134,250円 | 80,000円 |
| 2026年10月〜 | 155,000円 | 155,000円 | 100,000円 |
金額はいずれも1キロリットル単位です。表を横に見ると、ビールは6年で45,000円ぶん下がり、第三のビールは47,000円ぶん上がって、10月に同じ額で出会うことになります。
チューハイだけは2回目まで据え置きでした。「今回からチューハイも巻き込まれた」という感覚は正しくて、80,000円のまま6年間そのままだったものが、3回目でようやく動きます。
自分の缶がどちら側か、側面を見れば分かる
「第三のビール」「新ジャンル」は、酒税法に出てくる言葉ではありません。判断に使うのは、缶に印刷された品目表示です。
- 「ビール」と書いてあれば下がる側
- 「発泡酒」は麦芽比率しだい。パッケージのどこかに比率が書かれているので、25%未満なら上がる側、25%以上なら据え置き
- 「リキュール」「スピリッツ」「その他の醸造酒」と書かれた発泡性のものは上がる側
品目表示だけでは、第三のビールと缶チューハイの区別はつきません。ただ今回はどちらも上がる側なので、区別できなくても困りません。「ビール」または麦芽25%以上の「発泡酒」でなければ上がる、と押さえておけば足ります。
10月1日の朝に、値札が一斉に変わるわけではない
酒税は、酒類が製造場から出荷された時点でかかります(酒税法第6条)。輸入品なら保税地域から引き取った時点。買った人が払う税ではなく、出荷する側が納める税です。
新しい税率が適用されるのは、10月1日以降に工場を出た分から。9月中に出荷されて店の棚に並んでいる缶は、旧税率で納税が済んでいます。日付が変わった瞬間にすべての値札が書き換わる、という動き方にはなりません。
それでも「安い在庫が残る」は期待しにくい
今回いちばん知られていないのが、ここです。税率が上がるときには「手持品課税」という仕組みが働きます。
改正法の附則(平成29年法律第4号 附則第39条)は、2026年10月1日の時点で、税額が上がることになる酒類を販売のために2,000リットル以上持っている製造者・販売業者に、その差額分の酒税を課すと定めています。2020年10月と2023年10月のときの基準は1,800リットルでしたが、今回は2,000リットルに変わっています。
2,000リットルは、350ml缶なら約5,714本、500ml缶で4,000本。家庭の買い置きとは桁が違う量で、想定されているのは店側の在庫です。
これがあるので、店が9月中に大量に仕入れて安いまま売り続ける、という形は成り立ちません。値上がり側の缶については、10月に入れば店頭でも上がると見ておくほうが実際に近い。
下がるビールのほうには、店が持っていた在庫について差額を控除できる仕組み(戻入控除)が同じ附則に置かれています。ただ控除を受けるには申告が要り、それが値札に反映される時期は店ごとに違います。ビールの値下がりを初日から当てにしすぎないほうがいい、というのが正直なところ。
買いだめで守れる額を、先に計算しておく
金額を出してしまえば判断は早くなります。第三のビール350ml缶を1ケース(24本)買っておくと、守れるのは7.26円×24で174円。消費税を入れて約192円です。
500ml缶のケースなら10.37円×24で249円、税込およそ274円。缶チューハイ350mlは7円なので、1ケースで168円、税込では185円。
毎日1本(350ml)飲む人が1か月分の30本を買っておくと、税込で約240円。3か月分の90本を積み上げても約720円にとどまります。
この額と、置き場所と、飲みきれるかを見比べます。ビール系の缶には賞味期限が印字されています。缶の底か側面のどこかに入っているので、ケースを買う前にそこを見て、その日までに飲みきれる本数に収めてください。高温と直射日光を避けられる場所がない家では、数百円のために味を落とすことになります。
いつも同じ銘柄を箱で買っていて、涼しい置き場所がある人なら、9月中の1〜2ケースは理にかなった買い方です。銘柄をそのときどきで変える人や、置き場所が台所の床しかない人には向きません。
1年で見ると、どれくらいの差になるか
1缶あたりの数字は小さいので、飲む量から年額に直しておきます。
毎日350ml缶を1本あける人なら年365本。ビール派は9.1円×365で3,321円、消費税を入れて約3,650円ぶん軽くなります。第三のビール派は7.26円×365で2,650円、税込およそ2,900円ぶん重くなる。缶チューハイ派は7円×365で2,555円、税込2,800円の負担増です。
週末だけ500ml缶を2本、という飲み方なら年96本。ビールは1,248円ぶん下がり、第三のビールは996円ぶん上がります。
一人分で見れば家計簿に載るか載らないかの額ですが、上がる側と下がる側では、同じ本数を飲んでも年6,500円ほど開くことになります。
10月からは、ビールと第三のビールの税額差がゼロになる
いま350ml缶では、ビールの酒税63.35円に対して第三のビールは46.99円。16.36円の差が値札に乗っています。10月1日からは両方とも54.25円になり、酒税による差は消えます。
残るのは、原材料や製造にかかる費用、容器、ブランドの分だけ。第三のビールを選んでいた理由が主に値段だったのなら、10月以降にもう一度、同じ棚で両方の値札を見比べる価値があります。差が数円まで縮まっているなら、飲みたいほうを選べばいい。
もっとも、税額がそろったからといって小売価格まで必ずそろうわけではありません。実際の値札で確かめるのが確実です。
予約や取り寄せは、注文日ではなく出荷日で決まる
お歳暮やふるさと納税の返礼品で、9月に申し込んで11月や12月に届くビール類があります。この場合にどちらの税率で作られたものが届くのかは、申込日ではなく、その缶が工場を出た日で決まります。
10月以降に出荷される分は新しい税率です。ビールなら下がった税率で作られたものが届き、第三のビールなら上がった税率のものが届く。返礼品や贈答セットの価格は事業者が事前に決めているので、税額の差がそのまま値段に出るとはかぎりません。
「第三のビールがなくなる」と言われるのはなぜか
税率が同じになれば、麦芽の量を減らして税を軽くする理由は薄くなります。そのためメーカーの商品構成が動くのではないか、という見方が以前から出ています。
ただし2026年9月3日の時点で、第三のビールが法律上なくなるわけではありません。区分そのものが廃止されるのではなく、税率が同じになるだけです。棚から消える商品が出るかどうかはメーカーの判断であり、確定した話ではないので、今の時点で買いだめの理由にはしないほうが安全です。
今回は動かないお酒
見直しの時期は種類ごとに分かれていて、すでに終わっているものもあります。
清酒や果実酒などの醸造酒類は、2023年10月に1キロリットル100,000円へそろえる作業が完了しています。今回は動きません。焼酎・ウイスキー・ブランデーなどの蒸留酒類も、この段階的な変更の対象外です。
ノンアルコールビールは酒類にあたらないので、そもそも酒税がかかりません。原材料や包装資材、物流の費用は酒税とは別に動くので、値段が据え置かれる保証にはならない点だけ添えておきます。
「10月から酒が全部上がる」ではなく、動くのは発泡性のお酒だけ。ここを押さえておくと、売り場で迷わずに済みます。
度数10%台の缶チューハイは、むしろ下がる
細かい話ですが、当てはまる人には差が大きいので書いておきます。
「その他の発泡性酒類」に入る条件は、本来アルコール分11度未満です。ところが2020年10月から2026年9月30日までは、附則によって「10度未満」に読み替えられていました。この読み替えが9月30日で終わり、10月1日から11度未満に戻ります。
その結果、アルコール分10度以上11度未満の発泡性の缶は、いまは混成酒類として1キロリットル200,000円の扱いですが、10月1日からは100,000円に移ります。350ml缶で70円から35円へ、半分になる計算です。
度数9%の商品はもとから「その他の発泡性酒類」なので、そちらは28円から35円へ上がります。缶に書かれた度数が10%を超えているかどうかで、動く向きが逆になるわけです。
外食の値段は、この計算では読めない
飲食店の仕入れ値も同じように動きます。ただ店で出す1杯の値段は仕入れ値だけで決まるものではないので、生ビールが下がるかどうかは店ごとの判断になります。
税額の差だけで値札を予想しない、というのは小売でも同じです。2026年秋は原材料や包装資材の値上げも重なるため、酒税が9.1円下がったビールの店頭価格がそのまま9.1円下がるとはかぎりません。
9月のうちにやること
順番に片づけます。
- 冷蔵庫と買い置きの缶を1本ずつ手に取り、品目表示を見る。「ビール」なら待つ、それ以外は上がる側
- 1か月に何本飲むか数える。350ml缶の本数×7.26円が、買いだめで守れる額
- その額と置き場所を見比べる。1ケースで税込およそ190円
- 買う前に缶の賞味期限を見て、飲みきれる本数までにする
- ビールを箱で買う予定があるなら、10月に回す
ここまでの税率と施行日は、2026年9月3日時点の酒税法と改正法附則によるものです。金額と日付は法律に書き込まれているので、この先で動く見込みは高くありません。変わりうるのは店頭価格のほうなので、実際の値札は9月下旬にもう一度確かめてください。
参考資料
- 財務省「酒税に関する資料」— 発泡性酒類・醸造酒類の段階的な税率変更の全体像
- 国税庁「酒税」— 品目および税率適用区分の表示方法など実務資料
- 酒税法(e-Gov法令検索)第6条・第23条、平成29年法律第4号 附則第36条・第39条 — 税率、納税義務の発生時点、手持品課税の条文