要介護認定の結果が届いて、実態より軽いと感じたときに使える手続きは二つあります。市区町村へ出す「区分変更申請」と、都道府県の介護保険審査会へ出す「審査請求」です。急ぐ場面で先に動かすのは、多くの場合は区分変更申請のほうです。認定の有効期間中ならいつでも出せて、処分は申請日から30日以内に行われます。審査請求のほうは結果通知を受け取った日の翌日から3か月という期限があり、愛知県は受理から裁決まで少なくとも3か月程度かかるとしています。どちらを選ぶにしても、最初に市区町村の窓口で認定調査票と主治医意見書を受け取り、どこでどう判定されたのかを見るところから始めてください。
まず控えるのは、結果通知書を受け取った日
審査請求の期限は、この日から数えます。行政不服審査法18条1項は「処分があったことを知った日の翌日から起算して三月」を過ぎると審査請求はできないと定めていて、神戸市はこれを「結果通知書または却下通知書を受け取った日の翌日から起算して3月以内」と言い換えています。
期限はもう一本あります。同条2項の「処分があった日の翌日から起算して一年」です。通知を見落としていて、気づいたのが1年後だったという場合は、3か月を使い切っていなくてもここで止まります。どちらにも「正当な理由があるときは、この限りでない」という但し書きが付いていますが、その判断は審査会が行うので、期限内に出すのが前提です。
区分変更申請のほうには、条文上の期限がありません。ただし有効期間が切れてしまえば更新申請か新規申請の話になるので、通知書の有効期間の欄も一緒に見ておいてください。
二つの道は、出す先も、かかる時間も違う
| 区分変更申請 | 審査請求 | |
|---|---|---|
| 出す先 | 市区町村 | 都道府県の介護保険審査会 |
| 根拠 | 介護保険法29条1項 | 介護保険法183条1項・184条 |
| 期限 | 条文に定めなし。認定の有効期間中に出す | 通知を受け取った日の翌日から3か月。処分の日の翌日から1年 |
| 結果までの目安 | 申請日から30日以内(延期は理由付きで通知) | 愛知県は受理から裁決まで少なくとも3か月程度 |
| 何が行われるか | 認定調査と主治医意見書を取り直し、区分を決め直す | 処分に違法または不当な点がないかを審査する |
| 結果の形 | 新しい要介護状態区分 | 認容・棄却・却下のいずれか |
いちばん大きい差は、区分が実際に決め直されるかどうかです。区分変更申請は認定そのものをやり直すので、結果が出れば新しい区分で使えるようになります。審査請求で認容されたときに起きるのは、愛知県の説明では「処分が取り消される」ことです。取り消された時点で区分が上がるわけではありません。
動く前に、認定調査票と主治医意見書を受け取る
神戸市は、審査請求を検討する人に対して、区役所などの窓口で審査判定資料(認定調査票、主治医意見書など)を入手し、認定処分の経緯について説明を受けることを勧めています。順番として、資料の確認が先に置かれています。
これは区分変更申請でも同じです。要介護認定は、市町村の職員が本人に面接して行う調査(介護保険法27条2項)と、主治医への意見照会(同3項)をもとに、認定審査会が審査・判定して決まります。結果が軽いと感じたら、この二つの資料に戻ります。調査の日に本人が「できます」と答えてしまった項目はないか、主治医意見書に日々の困りごとが書かれているかを見ていきます。
資料を見てから、次のどちらに当たるかを分けてください。
- 調査票に書かれている状態が、いまの実態と違っている、または調査の日以降に悪化した → 区分変更申請
- 調査や判定の手続きそのものに納得できない → 審査請求
なお、資料の開示の方法や窓口は自治体ごとに決まっています。神戸市は各区役所・北須磨支所の保健事業・高齢者福祉担当の窓口としています。お住まいの市区町村では呼び名も場所も違うので、介護保険の担当課に「認定調査票と主治医意見書を見たい」と伝えて確認してください。
区分変更申請は、いつ、誰が出せるか
介護保険法29条1項は、要介護認定を受けた被保険者が「その介護の必要の程度が現に受けている要介護認定に係る要介護状態区分以外の要介護状態区分に該当すると認めるとき」に、市町村へ区分変更の認定の申請ができると定めています。更新の時期を待つ必要はありません。
条文に「状態が変化したこと」という要件は書かれていないのですが、自治体の案内は状態の変化を前提にしています。神戸市は「認定有効期間中に心身の状態の変化により介護の必要の度合いに変化がある場合」と書いています。申請書の理由欄には、いつ、どの動作が、どう変わったかを書くことになるので、転倒した日、夜間のトイレに付き添いが必要になった時期など、日付の分かる形で残しておくと窓口での説明が短く済みます。
手続きは本人が全部やらなくても構いません。29条2項が27条を準用しているので、27条1項後段の代行の仕組みがそのまま使えます。代わりに手続きを行えるのは、指定居宅介護支援事業者、地域密着型介護老人福祉施設、介護保険施設、地域包括支援センターです。担当のケアマネジャーがいるなら、まずその人に相談するのが早い道です。
結果までの日数も27条の準用で決まります。処分は申請のあった日から30日以内(27条11項)。心身の状況の調査に日時を要するなど特別な理由があるときは、30日以内に「あとどれくらいかかるか」と理由が通知されて延期されます。その通知もないまま30日が過ぎたときは、申請が却下されたものとみなすことができます(同12項)。
区分変更で、逆に軽くなることがある
区分変更申請は「重くしてください」という願い出ではなく、区分を決め直す手続きです。神戸市は注意事項として、要介護者からの状態の軽度化を申請理由とする変更申請で、要介護から要支援に変更になる場合があることを挙げています。
市町村の側から動くこともあります。介護保険法30条1項は、市町村が、介護の必要の程度が低下したことにより別の区分に該当するに至ったと認めるときは、区分変更の認定をすることができると定めています。
要支援に変わると、利用できるサービスの枠組みと支給限度額が変わります。いま使っているサービスが続けられるかどうかは、申請の前に担当のケアマネジャーと確認しておくのが安全です。
認定の有効期間は原則6か月に切り替わる
区分変更で認定されたときの有効期間について、神戸市は「原則6か月です。認定審査会の意見に基づき延長や短縮する場合もあります。(有効期間の範囲:3か月~12か月)」と案内しています。更新認定で最長48か月まで延びることがあるのと比べると、短い期間に戻ります。
有効期間の開始日は申請日です。神戸市の案内では「認定の有効期間の開始日は申請日(申請書類一式を認定事務センターまたは区役所に提出した日)から」です。介護保険法27条8項の「要介護認定は、その申請のあった日にさかのぼってその効力を生ずる」が、29条2項の準用で区分変更にもかかっているためです。
つまり、結果を待っている間に認定が途切れることはありません。一方で、有効期間が原則どおり6か月なら、半年後にはまた更新の手続きが来ます。
審査請求は、誰が、どこへ出せるか
介護保険法183条1項は、保険給付に関する処分(要介護認定または要支援認定に関する処分を含む)に不服がある者は、介護保険審査会に審査請求をすることができると定めています。その介護保険審査会は、184条により各都道府県に置かれています。市区町村の窓口ではありません。
出せる人について、東京都福祉局は「行政処分を受けた本人、またはその処分によって、直接自己の権利や利益を侵害された人」に限られると説明しています。そのうえで、委任状があれば代理人による申請もできるとしています。本人が書ける状態にないときは、委任状の様式を含めて提出先に確かめてください。
出し方は都道府県で違います。東京都福祉局は、東京都介護保険審査会の事務局(都庁第一本庁舎26階北側、03-5320-4293)か、処分を行った区市町村の介護保険担当課のどちらにも提出できると案内しています。方法は紙の書面か電子申請で、ファックスと電子メールでは受け付けていません。愛知県は、県庁西庁舎の県介護保険審査会事務局への持参、郵送、市区町村役場経由の三つを挙げています。
郵送で出すときは、行政不服審査法18条3項により、送付に要した日数は3か月の期間に算入されません。
裁決が出ても、その場で区分が上がるわけではない
愛知県は、裁決の結果を三つに分けて説明しています。認容は処分が取り消されること、棄却は処分が維持されること、却下は審査請求自体が不適法で取り消されないことです。そして「受理してから裁決までに少なくとも3か月程度要します」としています。
区分変更申請の30日と並べると、時間の差がはっきりします。認容されても取り消されるのは処分であって、その裁決が新しい要介護度を決めるものではありません。だから「いま足りないサービスを増やしたい」という場面では、区分変更申請のほうが目的に近い手続きになります。
逆に、調査や判定の進め方そのものに納得がいかず、記録として残したい場合には審査請求に意味があります。3か月の期限があるので、迷っている間に選択肢が消えないよう、通知を受け取った日だけは先に控えておいてください。
この記事が当てはまらない場面
- まだ結果が届いていない:申請から30日を過ぎても処分も延期の通知もないときは、介護保険法27条12項により却下されたものとみなすことができます。ただし実際には、まず市区町村の窓口へ進捗を聞くほうが早く片づきます。
- 有効期間がすでに切れている:区分変更申請ではなく、更新申請または新規申請になります。
- 区分は納得しているが、使える量が足りない:区分ごとの支給限度額の範囲と、ケアプランの組み方の問題です。担当のケアマネジャー、いなければ地域包括支援センターへ相談してください。
- 保険料や利用者負担割合の通知に納得できない:183条1項は保険料その他の徴収金に関する処分も審査請求の対象にしていますが、判断の材料が別になります。
確かめていないことと、使った公式ページ
確かめていない点を先に書きます。審査請求で認容されて処分が取り消されたあと、新しい区分がどう決まるのかは、今回開いたどのページにも書かれていませんでした。審査請求の手数料の有無についても、東京都福祉局・愛知県・神戸市のいずれのページにも記載がありませんでした。この二点は、提出先の都道府県の担当窓口で確認してください。また、資料の開示方法・申請書の様式・窓口の名称は自治体ごとに異なります。本文で挙げた神戸市と東京都、愛知県の記述は、その自治体の案内であって全国共通の手順ではありません。
2026年9月28日に開いたページは次のとおりです。
- e-Gov法令検索「介護保険法」— 第27条(認定の手続き、申請日へのさかのぼり、30日以内の処分)、第29条(区分変更の認定の申請)、第30条(市町村による区分変更)、第183条(審査請求)、第184条(介護保険審査会の設置)
- e-Gov法令検索「行政不服審査法」— 第18条(3か月・1年の審査請求期間、郵送日数の不算入)
- 神戸市「変更申請の注意事項」— 有効期間は原則6か月(範囲3〜12か月)、開始日は申請日、軽度化を理由とする変更で要介護から要支援になる例
- 神戸市「認定結果に不服がある場合」— 兵庫県介護保険審査会への審査請求、期限の数え方、審査判定資料を先に入手して説明を受けるよう勧める案内
- 愛知県「介護保険に係る審査請求(不服申立て)について」— 提出先の三つの方法、認容・棄却・却下、受理から裁決までに要する期間の記載
- 東京都福祉局「介護保険の審査請求(不服申立て)」— 審査請求できる人、委任状による代理、提出先と提出方法(ファックス・電子メール不可)