石油ストーブや石油ファンヒーターに、灯油と間違えてガソリンを入れると、少量の混入でも火災が発生するおそれがあります。NITE(製品評価技術基盤機構)がそう注意しています。2017年度から2021年度までの5年間にNITEに通知された製品による建物火災312件では、原因の3位が「ガソリンを誤給油して出火」でした。
防ぐ方法として公的機関がそろって挙げているのは、灯油とガソリンを別の容器に入れ、ラベルで区別し、別の場所に置くことです。ガソリンが混じった灯油を使ってしまったときは、東京消防庁西新井消防署が、すぐに使用を停止し、必要に応じて消防署や販売店などに相談するよう案内しています。
この記事では、誤給油がなぜ火災になるのか、どういう家で起きやすいのか、気づいたときに何が分かっているのかを、公的な資料で確かめます。
建物火災の原因3位が「ガソリンの誤給油」
NITEが2023年2月22日に公表した資料によると、2017年度から2021年度までにNITEに通知された製品事故情報のうち、住宅や店舗などが半焼または全焼した建物火災は312件でした。原因のトップ3はいずれも暖房器具(石油ストーブ・石油ファンヒーター・電気ストーブ)によるものです。
- 可燃物が接触して着火
- 灯油が漏れて引火
- ガソリンを誤給油して出火
NITEは、三つとも誤使用や不注意等による事故だったとしています。3位については、ガソリンと灯油を同じ容器や同じ場所で保管していて、特に高齢者が作業する際に誤給油する事故が多く発生していると説明しています。
資料に載っている事例は、2018年6月に新潟県で起きたものです。80歳代の男性が使っていた石油ストーブが異常燃焼を起こし、建物が全焼、3棟に燃え移り、1人が亡くなり、1人が重傷、1人が軽傷を負いました。使用者が誤ってガソリンを給油したためと推定されています。
NITEの別のチラシには、焼けた石油ファンヒーターの周辺からガソリン成分が検出され、使用者が誤ってガソリンを給油し、気化したガソリンに引火したと考えられる死亡事故も載っています。
なぜガソリンだと燃え上がるのか
四日市市消防本部の資料は、仕組みをこう説明しています。
暖房器具の灯油タンクに誤ってガソリンを入れてしまうと、ガソリンは灯油よりも揮発性が高いことから、燃焼しているうちにガソリンが揮発し、タンク内部の圧力が時間の経過とともに高まります。そのため、ガソリンが外部に浸みだして引火し、暖房器具全体が炎に包まれてしまいます。
暖房器具は室内で使うことが多いので、炎はまたたく間に周りに燃え広がる危険があるとしています。
東京消防庁西新井消防署の資料も、使い始めてすぐに異常燃焼するとは限らないと注意しています。点火してしばらく普通に燃えていても、それで安全と判断はできません。
どんな家で取り違えが起きるか
NITEが挙げているのは、ガソリンと灯油を同じ容器や同じ場所で保管しているケースです。
広島市消防局は、農機具に使うなどの理由で自宅にガソリンを保管する場合は専用の容器で保管する必要があり、暖房用の灯油と取り違えてストーブに誤給油しないよう、必ず別々の場所に保管するよう案内しています。
NITEは、高齢者が給油する際は家族がサポートするよう呼びかけています。
容器と置き場所の分け方
公的な資料に書かれている分け方は次のとおりです。
- 容器を分ける:灯油は「灯油用ポリタンク」などの専用容器、ガソリンは消防法に適合した「ガソリン用携行缶」に入れる(NITE)
- ラベルで区別する:ラベル表示で区別して保管する(NITE)。色違いの容器を使うなど、灯油とガソリンがひと目で区別できるようにする(NITEのチラシ)
- 置き場所を分ける:灯油とガソリンは同じ場所に保管せず、別々の場所に置く(NITE、広島市消防局)
ガソリンを入れる容器にも決まりがあります。埼玉県危険物事故防止連絡会の資料(ガソリンスタンド向け)によると、ガソリンは灯油用ポリ容器に入れることはできず、「試験確認済証」のある消防法令に適合したガソリン携行缶を使う必要があります。ガソリンの容器への詰め替えは、セルフスタンドであってもスタンドの従業員以外は行えず、容器に詰め替えて販売するときは購入者の本人確認が必要とされています。
給油のときの基本
NITEは、ガソリンの誤給油とあわせて、給油時の灯油漏れ(建物火災の原因2位)についても注意しています。
- 給油する前に必ず火を消す
- 給油後は給油口キャップをしっかり締め、灯油がタンクから漏れていないことを確かめてから本体にセットする
- 漏れた灯油がストーブやファンヒーターにかかったときは、機器の内部に入り込んでいるおそれがあるので使用を中止し、販売事業者や製造事業者に相談する
石油燃焼機器は2009年に消費生活用製品安全法の「特定製品」に指定され、2011年からPSCマークのない製品は販売できなくなりました。NITEによると、PSCマークの付いた製品には、燃焼中でもカートリッジタンクを抜くと90秒以内に消火する給油時消火機能などが付いています。NITEは、安全機能の付いた製品への買い換えの検討も勧めています。
ガソリンが混じったかもしれないとき
公的な資料で確かめられたのは、ここまでです。
- 東京消防庁西新井消防署は、他県でガソリンが混入した灯油が販売され、それを使ったファンヒーターから出火したと思われる火災が起きたことを受けて、すぐに使用を停止し、必要に応じて消防署や販売店などに相談するよう案内しています。色、臭い、燃え方で「何か変だな」と感じたら、すぐに対応するよう求めています。
- NITEは、ガソリンを誤って給油した場合、少量の混入でも火災が発生するおそれがあるとしています。
自分で取り違えて入れてしまった場合の具体的な処置(タンクから抜く方法、ストーブを使い続けてよいかの判断など)を示した公的資料は、今回は見つかりませんでした。これらは機器の取扱説明書を確かめ、販売店や製造事業者、消防署に相談してください。
この記事で確認できなかったこと
2026年11月5日時点で、次の点は今回読んだ資料では確かめられていません。
- 誤ってガソリンを入れたストーブの、タンクの中身の抜き方と処分のしかた。
- 抜いたあとにストーブを使ってよいかの判断基準。
- ガソリンの誤給油による火災の、毎年の全国件数。NITEの資料は通知された製品事故の集計です。
- 灯油用ポリタンクの色(赤・青など)について、公的な決まりがあるかどうか。
参考資料
- NITE 小さなうっかりが大きな火災に~「製品による建物火災」原因トップ3~(2023年2月22日) — 2017〜2021年度の建物火災312件、原因3位、新潟県の事例、少量の混入でも火災のおそれ、容器と保管、PSCマーク
- NITE 石油ストーブによる死亡事故(チラシ) — 気化したガソリンに引火した事例、別の場所で保管、ラベル表示
- NITE 石油ストーブでの火災(チラシ) — 間違えてガソリンを入れない
- NITE こんな事故にもご用心(No.6) — 色違いの容器などでひと目で区別
- 東京消防庁西新井消防署 ガソリンが混入した灯油の使用によると思われる火災が発生! — すぐに使用を停止、消防署や販売店に相談、すぐに異常燃焼するとは限らない
- 四日市市消防本部 誤給油に注意しましょう! — 揮発してタンク内圧が高まる仕組み
- 埼玉県危険物事故防止連絡会 ガソリンの誤販売について — 灯油用ポリ容器不可、試験確認済証のある携行缶、詰め替えは従業員、本人確認
- 広島市消防局 石油ストーブ・暖房器具火災に注意しましょう! — 農機具用などのガソリンは専用容器で別々の場所に