ALT 80は「すぐ入院」ではないが放置もできない数値
日本肝臓学会の奈良宣言2023は、健康診断などでALT値が30を超えていた場合、まずかかりつけ医等を受診することを勧めています。ALT 80 はその目安の2倍を超えています。
すぐに入院が必要な数値ではありません。ただし**再検査を待つ段階でもありません。**学会が示す順番は、まずかかりつけ医を受診し、採血や腹部超音波検査などで原因を調べ、必要と判断されれば消化器内科でより詳しい検査に進む、というものです。
黄疸、濃い茶色の尿、右上腹部の痛みが続く、強い倦怠感が2週間以上— これらがあれば、受診を先延ばしにしないでください。
ALT 80まで上がる主な原因
ALT(アラニンアミノトランスフェラーゼ)は肝細胞が傷んだときに血中に放出される酵素です。ALT 80が問題になるのは、主に以下のような状況です。
非アルコール性脂肪肝(NAFLD/NASH)
日本で最も多いALT上昇の原因です。内臓脂肪の蓄積により肝細胞に脂肪が溜まり、炎症が起きます。BMI 25以上・腹囲が基準超・中性脂肪高値が揃っている場合は脂肪肝を強く疑います。
過度の飲酒
アルコール性肝障害では、ALTよりASTやγ-GTPが高くなりやすい傾向がありますが、ALTも上昇します。「適量」を超える飲酒が続いている場合は要注意です。
慢性ウイルス性肝炎
B型・C型肝炎ウイルスへの感染は、長年症状なしにALTを上昇させ続けることがあります。健康診断でのウイルス検査を受けたことがない方は、一度確認することをお勧めします。
薬剤性肝障害
市販の解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン)、漢方薬、健康食品・サプリメントが肝障害の引き金になる例は珍しくありません。最近新しく飲み始めたものがある場合は医師に伝えてください。
激しい運動の直後
ALTはASTほどではありませんが、激しい筋肉運動の後に一時的に上昇することがあります。健康診断の前日にマラソンや激しいトレーニングをしたなら、まずその影響を疑ってみてください。
様子見でよい人と、早めに受診したい人
受診したときに医師へ伝えるべき事情
次のような事情があると、数値の読み方が変わることがあります。受診しない理由ではなく、受診したときに伝える材料として整理しておいてください。
- 前日に激しい運動をした直後の採血だった
- 過去の健康診断でも同程度の数値で、すでに医師のフォローを受けている
- 発熱や感冒など、急性疾患の最中に採血した
すでに主治医が経過観察中の場合は、その医師に結果票を見せて指示を仰いでください。
早急に受診が必要なケース
- ALT 100 U/L超
- ALTが急激に上昇している(前回より50以上増加)
- 皮膚・白目の黄疸、濃い茶色の尿
- 右上腹部の圧迫感・鈍痛
- 強い疲労感・食欲不振が2週間以上続く
受診費用の目安と、再検査までにできること
受診した場合の検査費用(目安)
- 血液検査(肝機能パネル):3,000〜5,000円(3割負担)
- 腹部エコー(超音波)検査:2,000〜4,000円(3割負担)
- 肝炎ウイルス検査(B型・C型):初回は自治体の無料検診を利用できることが多い
放置した場合のリスク
脂肪肝が放置されると、NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)→肝硬変→肝がんへ進行するリスクがあります。慢性肝炎の場合も同様の進行リスクがあります。進行するにつれて治療の選択肢が狭まるため、早期発見・早期対処が重要です。
生活習慣の改善
再検査までの期間でも以下を実践することで、次の検査値に影響する可能性があります。
- 飲酒:禁酒、または週1〜2日以下に削減
- 食事:揚げ物・甘い飲み物・精製炭水化物を減らし、野菜・魚・大豆製品を増やす
- 運動:週150分以上の中強度有酸素運動(速歩・水泳・自転車)
- 体重:現体重の5〜7%減少でALTが改善することが多数の研究で示されています
サプリメントへの注意
「肝臓に良い」とされる一部のサプリメントや健康食品が、逆に肝障害を引き起こすことが知られています。ウコン・イチョウ葉・一部の漢方薬に注意が必要です。現在服用中のものは受診時に全て医師に伝えてください。
「大丈夫」と言われても確認したいこと
毎年ALTが高めでも医師から「大丈夫」と言われている場合、その判断の根拠を確認しておくと安心です。腹部エコーでの確認、B型・C型肝炎ウイルス検査、原因の特定という3点が済んでいれば、経過観察の指示は妥当なことが多いです。逆に、腹部エコーをまだ一度も受けていないなら、次の受診で一度実施してもらうよう依頼してみてください。生命保険・医療保険の加入を検討している方は、「要再検査」の状態だと告知が必要になるため、先に受診して正式な診断を得ておくほうが手続きがスムーズです。
参考資料
- 日本消化器病学会「NAFLD/NASHガイドライン2020」— 非アルコール性脂肪肝の診断・治療の基準
- 厚生労働省 e-ヘルスネット「肝機能検査について」— ALT・AST・γ-GTPの基準値と意味の解説
- 日本肝臓学会「患者さんのための肝臓病の基礎知識」— 肝臓病の進行と受診タイミングの解説