育休復帰後の時短勤務、4〜6月の給与で社会保険料は下がっても将来の年金まで減ってしまう?

結論

復帰直後の時短勤務には、『育児休業等終了時改定』で社会保険料を早めに下げる経路と、『養育期間中の従前標準報酬月額のみなし措置』で将来の年金額を守る経路の二段構えがあります。どちらも事業主経由の申請が前提で、養育特例は申請月の前月から最大2年遡って認められます。

どうする?編集部 · · 読了 約8分
目次(8項目)
  1. 4〜6月の給与で標準報酬月額が決まる仕組み
  2. 復帰直後なら『育児休業等終了時改定』が先に効く
  3. 年金額を守る『養育期間中の従前標準報酬月額のみなし措置』
  4. 申請できる人と書類のそろえ方
  5. 申請のタイミングと、健康保険・雇用保険には反映されない点
  6. 申請忘れに気づいたときの遡及
  7. 育休中の保険料免除との違い
  8. 参考資料

育休から復帰したばかりで時短勤務をしている方から「4〜6月の給与が低いと、9月以降の社会保険料は下がるのか」「下がった分、将来の年金まで一緒に減ってしまうのか」という相談が、6月の給与日が近づくこの時期に増えます。社会保険料の月額は4〜6月の給与で見直されますが、復帰直後の方には別ルートの『育児休業等終了時改定』も用意されています。年金額の減少を防ぐ『養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置』を組み合わせると、将来の受給額を守りながら毎月の負担を下げる動きができます。まず確認したいのは、子の年齢が3歳未満かどうかと、勤務先で書類を出した記憶があるかどうかです。

4〜6月の給与で標準報酬月額が決まる仕組み

健康保険料と厚生年金保険料は、給与のその月の額面ではなく『標準報酬月額』という別の区分で計算されます。健康保険・厚生年金・介護保険(40歳以上)のいずれも、この標準報酬月額に料率を掛け、事業主と被保険者で半分ずつ負担する形です。標準報酬月額は毎年7月の手続きで見直され、4・5・6月の3か月間に支払われた給与の平均から決まります。新しい区分はその年の9月から翌年8月まで適用される、というのが基本のサイクルで、これが『定時決定』と呼ばれる仕組みです。

例として、月給28万円前後で働いていた方が育休から復帰し、時短勤務で月18万円程度に減った場合、定時決定の対象になる4〜6月の平均額もそれに合わせて下がります。新しい標準報酬月額の等級も低めに切り替わり、9月以降の社会保険料は軽くなる流れです。一方、4〜6月にフルタイムで残業が重なっていた方は標準報酬月額が高めに決まり、その後の月で給与が下がっても、9月までは旧の負担額が続く形になります。

定時決定の対象に含めてもらえる月は、支払基礎日数(給与計算の対象となった日数)が17日以上、短時間労働者は11日以上ある月だけです。育休復帰の月が5月や6月にかかっていて、復帰後の出勤日数が17日に届かない月が出る場合は、その月が定時決定の計算から外れます。3か月すべてが基準未満になると定時決定そのものが行われず、前年の標準報酬月額が引き継がれる扱いです。

復帰直後なら『育児休業等終了時改定』が先に効く

定時決定の見直しは年に一度ですが、復帰直後に時短勤務へ切り替えた場合は、それより早く社会保険料を引き下げられる仕組みがあります。『健康保険・厚生年金保険 育児休業等終了時報酬月額変更届(育児休業等終了時改定)』は、育休が終わった月の翌月から3か月の給与平均をもとに、4か月目から標準報酬月額を改定する制度です。

通常の随時改定では『標準報酬月額が2等級以上変動した場合のみ』というハードルがありますが、育児休業等終了時改定は1等級の変動でも申請が認められる柔らかい仕組みです。時短勤務での月収がフルタイム時より1段階下がっていれば対象になり得ます。注意したい点は、3か月の平均には支払基礎日数17日以上の月のみが含まれること、被保険者本人の申出が前提で自動では適用されないことです。

仮に復帰前の標準報酬月額が30万円、復帰後の時短勤務で20万円相当の等級まで下がった場合、健康保険料・厚生年金保険料の自己負担額は合計で月1万円台の差が出ます。実際の差額は加入している健康保険(協会けんぽか組合健保か、所在地)で料率が変わるため、目安として給与明細の控除欄で差を確認してください。9月の定時決定を待つよりも、復帰後4か月目から効かせられる差を年単位で見ると、家計への影響はそれなりの大きさになります。

申請は事業主経由で日本年金機構の事務センター(または加入している健康保険組合)に提出する流れです。勤務先の人事担当が間に立つ形なので、復帰の打ち合わせのタイミングで「終了時改定もお願いしたい」と一言伝えておくと、書類の手戻りが少なく進みます。

年金額を守る『養育期間中の従前標準報酬月額のみなし措置』

社会保険料の負担が下がる流れは毎月の家計には助かる一方で、厚生年金は標準報酬月額の積み上げで将来の受給額が決まるため、低い月が長く続くほど受け取る年金が減る、という別の影響が出ます。これを防ぐために設けられているのが、厚生年金保険法第26条の『養育期間中の従前標準報酬月額のみなし措置』、いわゆる養育特例です。

仕組みは少し独特で、3歳未満の子を養育している期間中に標準報酬月額が下がったときに、年金額の計算上だけは『養育を始めた月の前月』の標準報酬月額で計算されたものとみなしてくれます。毎月の社会保険料は実際の(下がった)標準報酬月額で動くため、被保険者から見ると『負担は軽いままで、将来の年金は守られる』という二重に有利な形です。

対象は3歳未満の子を養育している被保険者で、男女問わず申請できます。父親が時短勤務に切り替えた場面でも同じ制度が使え、共働きで両親ともが厚生年金に加入していれば、それぞれが個別に申請できる仕組みです。育休中の保険料免除期間と重なっている期間は対象外ですが、復帰後に時短勤務を開始した時点から、子が3歳に到達する月の前月までが養育特例の対象に乗ります。

申請できる人と書類のそろえ方

養育特例の申請を出せるのは、次のいずれにも当てはまる方です。3歳未満の子を養育している、子と同居している(単身赴任など別居の事情があれば申出書に状況を記載)、厚生年金保険の被保険者である、養育期間中に標準報酬月額が下がった、または下がる予定がある。育休中の保険料免除を受けている期間そのものは対象外で、復帰した月以降の時短勤務の期間が対象に乗る形です。

書類は勤務先経由で日本年金機構(または加入している健康保険組合)に提出します。記入するのは『健康保険・厚生年金保険 養育期間標準報酬月額特例申出書・終了届』で、申出と終了の両方に使える書式です。添付書類は、子の戸籍謄本または戸籍抄本(被保険者と子の身分関係を確認するため)と、住民票の写し(子と同居している事実を確認するため、申出日から90日以内に発行された原本)の組み合わせです。マイナンバーを勤務先に届け出ていれば、住民票の添付が省略できる場合があります。

書類のひな型は日本年金機構のホームページからPDFでダウンロードできます。勤務先の総務・人事部にも書式が常備されていることが多いため、まずは社内の窓口に『養育特例の申請書を出したい』と伝えると一度で書類が揃いやすくなります。健康保険組合に加入している会社では、組合経由の独自書式に置き換わっている場面もあるため、健保のホームページも合わせて確認しておくと安心です。

申請のタイミングと、健康保険・雇用保険には反映されない点

養育特例の効果は、申請書を提出した月から将来に向けて発生する分と、申請月の前月から最大2年遡って認められる分を合わせて考えます。育休復帰のタイミングで終了時改定と一緒に出すのが最もシンプルな流れですが、復帰から1年以上経って思い出した場合でも、2年以内であれば遡って申請できる仕組みです。

注意したいのは、養育特例の効果は厚生年金の年金額計算にだけ反映され、健康保険料・雇用保険料・所得税の計算には影響しない点です。毎月の手取りや配偶者の扶養判定は、実際の(下がった)標準報酬月額のままで動きます。『将来の年金だけを守る制度』と整理して期待値を合わせておくと、後で勘違いになりません。配偶者の扶養に入る・入らないといった判定は別軸で動くことも、合わせて意識しておくと安全です。

養育を終わるタイミング(子が3歳に到達した、子が亡くなった、被保険者本人が退職した、子と同居しなくなったなど)では、終了届を別途提出します。終了届を出さないままだと、年金事務所側から養育状況の確認連絡が後から入る場合があります。子が3歳に到達した日と被保険者の退職日のどちらか早いほうが終了の基準と覚えておくと、書類のタイミングを逃しにくくなります。

申請忘れに気づいたときの遡及

『養育特例の存在を知らずに、子どもがもうすぐ3歳になりそう』『下の子のときは申請したのに、上の子のときに忘れていた』という相談もあります。前述の通り、申請月の前月から最大2年遡って効力が認められるため、子が1歳から3歳までの時短勤務期間でも、その範囲内であれば遡って救済されます。3歳を過ぎてからの申請でも、遡及期間の中に過去の養育期間が入っていれば、その分は適用される扱いです。

『養育を始めた月の前月の標準報酬月額』が分からない方は、ねんきんネット(マイナポータル経由でログイン)で被保険者記録を確認できます。過去の標準報酬月額が月単位で並んでいるため、養育開始月の前月の数字をそこから拾えます。記録の見方が分かりにくいときは、年金事務所の窓口でも履歴を出力してもらえます。

転職して別の会社に移った場合でも、子が3歳未満で養育を続けていれば、新しい勤務先で改めて養育特例を申請できます。前職での申請が自動的に引き継がれるわけではないため、転職した翌月あたりに新しい勤務先の人事に申し出るのが安全な順序です。退職と再就職の間に空白期間がある場合は、その期間は厚生年金の被保険者ではないため、対象外として扱われます。

育休中の保険料免除との違い

混同しやすいのが、育児休業期間中の社会保険料免除制度(健康保険法・厚生年金保険法に基づくもの)です。こちらは育児休業を取得している間、健康保険料・厚生年金保険料の両方が免除され、しかも厚生年金の年金額計算では『保険料を払ったもの』として扱われる仕組みです。負担をゼロにしながら年金記録は守れるため、産前産後休業・育児休業中はこの免除制度が一番効きます。

養育特例は、この免除が切れた後の時短勤務期間に効く制度、と位置付けて整理すると見通しがよくなります。免除制度の対象は『育休中』、養育特例の対象は『復帰後の時短勤務などで標準報酬月額が下がった期間』で、両者は時間軸で連続している場面が多い構造です。

ここに加えて、子が3歳になるまでの短時間勤務制度(育児・介護休業法)という、雇用条件としての時短を会社に求められる権利も存在します。社会保険の手続きと労働法上の権利が同じ『3歳未満』という年齢で重なるため、申請書類は別、根拠法も別、と分けて考えると整理がスムーズです。

参考資料

  • 日本年金機構 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置
  • 全国健康保険協会 育児休業等終了時報酬月額変更届
  • 厚生労働省 公的年金制度の概要
  • e-Gov 法令検索 厚生年金保険法
育休復帰後の時短勤務、4〜6月の給与で社会保険料は下がっても将来の年金まで減ってしまう? — お金 関連イラスト (どうする?)
Photo by Umesh Soni on Unsplash

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参考資料

  1. 日本年金機構 養育期間の従前標準報酬月額のみなし措置
  2. 全国健康保険協会 育児休業等終了時報酬月額変更届
  3. 厚生労働省 公的年金制度の概要
  4. e-Gov 法令検索 厚生年金保険法

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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