遺族厚生年金が5年で打ち切り?2028年改正で30代の妻は対象になるのか
施行は2028年4月。女性は40歳未満かつ子なしから段階的に5年有期へ。男性は施行日から5年有期。給付額は1.3倍に増額され所得制限は撤廃。子のいる家庭や既受給者は影響を受けません。
目次(11項目)
遺族厚生年金の見直しは2028年4月から始まります。法律は2025年6月に成立し、施行までまだ2年弱の猶予があります。「30代で会社員のパートナーがいるけれど、自分は対象になるの?」というご相談が増えてきました。まず確認する場所は、ねんきんネットの加入記録と、ご自分の生年月日です。落ち着いて自分の区分を見極められるよう、年齢ごとに整理します。
動き出すのは2028年4月、まだ2年弱の準備期間
今回の見直しは、女性の就業率が上がったことや、共働き家庭が増えたことを背景に、男女差を縮める方向で行われます。法律は2025年6月13日に国会で成立し、施行日は2028年4月1日です。
現行では、夫が亡くなった場合の妻は年齢を問わず遺族厚生年金を受給でき、原則として一生涯受け取れる仕組みでした。一方、妻が亡くなった場合の夫は55歳以上でないと受給権が発生せず、しかも支給は60歳からというハードルがありました。この男女差を、男女ともに「子のない60歳未満は5年間の有期給付」という形でそろえる、というのが改正の中心線です。
ただし女性側は、施行日からすぐ全員に5年有期化が適用されるわけではありません。20年かけて段階的に対象を広げる方針が示されており、初年度(2028年4月)に5年有期の対象になるのは「2028年度末時点で40歳未満かつ子のいない方」と限定されています。施行時点で40歳以上の女性は、現行どおり無期給付が続きます。
つまり、今回の改正が「すぐに大勢の人に影響する」わけではなく、若い世代から少しずつ切り替えていく設計になっています。30代で「自分は5年で終わってしまうのか」と心配な方は、まず年齢と子の有無の組み合わせを確認するところから始めると整理しやすくなります。
自分の区分を確認する順序
ご自身が改正の影響を受けるかどうかは、次の順番で見ていくとわかりやすくなります。
最初に確認するのは、現在の年齢と2028年4月時点の年齢です。2028年4月の時点で40歳以上になる女性は、今回の見直しでは原則として影響を受けません。現行どおり、生涯にわたって受け取れる仕組みのままです。
次に確認するのは、18歳年度末までのお子さんを養育しているかどうかです。お子さんがいて遺族基礎年金の対象に当てはまる間は、遺族厚生年金も無期で続きます。改正後も、この部分は変わりません。お子さんが18歳年度末を迎えた時点で、その後の取り扱いがどうなるかは本人の年齢によって変わります。
3つ目の確認は、現在すでに遺族厚生年金を受給しているかどうかです。すでに受給している方は、今回の見直しの対象外で、現行のまま続きます。
これらをすべて経て、「2028年4月時点で40歳未満」「子なし」「未受給」というすべての条件に当てはまる女性が、新たに5年有期の対象となります。厚労省の試算では、施行直後にこの条件で新たに対象になるのは年間およそ250人程度とされています。決して多い人数ではないものの、対象になる本人にとっては大きな話なので、不安に感じる方が多いのも自然なところです。
男性側はもう少しシンプルです。施行日から、子のない60歳未満の男性も新しく5年有期で受給できるようになります。これまで55歳の壁で受給できなかった層が新たに対象に入る形になり、男性にとっては受給機会が広がる改正と言えます。
段階的に拡大される女性の対象範囲
女性の有期給付化は、20年かけて段階的に拡大される予定です。厚労省は「2028年度末時点で40歳未満」を起点として、年度ごとに少しずつ対象年齢を引き上げ、最終的には60歳未満まで広げる計画を示しています。
具体的な年度ごとの引き上げ幅は今後の政省令で詳しく示される部分が多く、現時点で確定的なスケジュールが公開されているわけではありません。「20年かけて60歳未満まで広げる」という大枠を頭に置きつつ、自分の年齢が将来どこに位置するかを大まかにつかんでおくのが現実的です。
今30代前半の方は、2028年4月時点でも30代のままなので、初年度から対象に入る可能性が高くなります。30代後半の方は、2028年4月時点でちょうど40歳前後となるため、誕生月によって対象に入るかどうかが分かれます。40代の方は施行時点で40歳以上のため、今回の見直しでは現行どおりです。
不安なまま放っておくと家計の判断を間違えやすいので、夫婦のどちらが厚生年金加入者か、自分の生年月日と2028年4月の関係、お子さんの予定があるかどうかを、一度家族で話しておくとよいでしょう。
給付額は1.3倍、所得制限は撤廃
5年有期になる代わりに、給付額は引き上げられます。「有期給付加算」と呼ばれる新しい上乗せが付き、結果として現在の遺族厚生年金額のおよそ1.3倍が支給される予定です。
現行制度では、遺族厚生年金には高所得者向けの支給停止規定があり、本人の年収が一定額以上だと一部または全部が止められていました。改正後はこの所得制限が撤廃されるため、共働きでご自身の収入がしっかりある場合でも、亡くなった配偶者の厚生年金分はきちんと受け取れるようになります。
共働きが当たり前になった世代にとっては、所得制限の撤廃は実利のある変更です。今までは「自分の収入があるから受け取れない」という事例がありましたが、改正後は受給できるようになります。一方で「無期から有期へ」という縮小面もあるため、家計全体での損得は世帯収入や年齢構成によって違ってきます。
5年分が一気に増額されると考えると、たとえば現行で月10万円相当の方なら、改正後は月13万円相当が5年間支給されるイメージです。具体的な金額は加入歴・標準報酬月額で大きく変わるので、ねんきんネットで「自分の場合の見込み額」を試算しておくと、家計の話し合いがしやすくなります。
5年経過後も継続できる仕組み
「5年で完全に打ち切り」と理解されることが多いのですが、改正案では5年経過後も状況に応じて引き続き受け取れる仕組み(継続給付)が用意されています。
継続給付の対象として厚労省が示しているのは、5年経過時点で障害年金1級または2級を受給している方、そして収入が著しく低く生活の安定が確保できない方です。具体的な所得基準や継続給付の額は今後の政省令で決まる部分が多く、現時点では確定していません。施行までの間に厚労省から段階的に詳細が公表される予定です。
つまり、「5年で全員が一律に終わる」のではなく、「働けない事情や生活の困難がある人には引き続き支給する」という設計です。健康な状態で再就職して安定収入を得られた場合は5年で区切り、健康面・経済面で支えが必要な場合は継続する、という方向と読み取れます。
なお、5年経過時点の判定なので、その後ライフイベントで状況が変わった場合の取り扱いは別途整理が必要になります。最新の案内は施行が近づいてから厚労省のサイトで確認するのが安全です。
中高齢寡婦加算は段階的に縮小
現行制度には「中高齢寡婦加算」という仕組みがあります。40歳から65歳までの間、子のない妻に追加で加算される仕組みで、年間およそ61万円が上乗せされます。
この中高齢寡婦加算は、改正後に施行日以降の年度ごとに段階的に金額を逓減し、最終的に廃止される方向です。すでに受給している方や近い時期に受給する方への影響を抑えるため、いきなり止めるのではなく長い期間をかけて減らしていく形になります。
中高齢寡婦加算は、これまで「子のない妻の中高年期の生活を支える仕組み」として機能してきました。今後は、有期給付加算(1.3倍化)と継続給付の組み合わせで、収入が低い方を中心に支援を集中する設計に切り替わっていきます。中高年で配偶者を亡くされた方の家計設計には影響が出るため、自分の世代でどう変わるかは一度確認しておきたいところです。
死亡分割という新しい仕組みも
合わせて新設されるのが「死亡分割」と呼ばれる仕組みです。亡くなった配偶者の厚生年金加入期間の一部を、生き残った配偶者の年金記録に振り替えられる制度で、老後の本人の年金が増える効果があります。
離婚時に厚生年金を分割する仕組み(合意分割・3号分割)はすでにありましたが、死別の場合にも同様の考え方を持ち込む形です。詳しい計算方法や分割割合は今後の政省令待ちですが、遺族厚生年金が有期になる分の不安を、老後の本人の年金で一部カバーしようという発想と理解できます。
5年で給付が終わったあとも、老後に本人名義の年金として上乗せが続くため、「5年で完全にゼロになる」というイメージから、「5年と老後の2段階で支える」という構造に変わると見ておくとよいでしょう。
夫を亡くした場合と妻を亡くした場合の違い
現行制度では、性別によって受給できる条件に大きな差がありました。改正後はこの差が縮まるものの、すぐに完全に同じになるわけではありません。
夫を亡くした妻(女性側)の改正は、20年かけて段階的に進む点が特徴です。施行直後は40歳未満かつ子のない方だけが5年有期の対象で、それ以上の年齢層は無期給付のまま続きます。年度を追うごとに対象年齢が引き上げられる予定なので、ご自身の年齢が将来どこに位置するかで影響度合いが変わります。
妻を亡くした夫(男性側)の改正は、施行日からすぐに新ルールに切り替わります。これまで55歳未満は受給権そのものがありませんでしたが、改正後は60歳未満の子なし男性も新たに5年有期で受給できるようになります。男性側は給付の機会が広がる方向の変更です。
つまり同じ「5年有期化」という言葉でも、女性は「無期から有期へ縮小」、男性は「対象外から有期へ拡大」と意味が逆になります。夫婦のどちらが先に亡くなるかで結果が変わるため、家計の万一を考えるときは両方向で確認しておくと整理しやすくなります。
遺族基礎年金の子の加算は引き上げ方向
今回の改正パッケージには、子のいる家庭への支援強化も含まれています。遺族基礎年金に上乗せされる「子の加算額」が、これまでより引き上げられる方向で見直されます。
現行では、第1子・第2子はそれぞれ年間およそ23万円、第3子以降は年間およそ7万円の加算でした。改正後は、第1子・第2子と第3子以降の差を縮め、全体として加算額を増やす方向です。具体的な金額は施行までに段階的に示される予定です。
お子さんを育てている世代にとっては、無期給付が維持されるうえに、子の加算も増えるという二重のプラスが期待できます。今後数年でお子さんを迎える予定がある方は、改正による加算額の改善も視野に入れて家計を考えてみるとよいでしょう。
今からできる準備
施行までまだ2年弱あるため、いきなり何かを契約する必要はありません。それでも次のような準備をしておくと、いざというときの判断が落ち着きます。
まずは、ねんきんネットでパートナーの加入歴と標準報酬月額を確認します。配偶者にもしものことがあった場合の見込み額は、加入歴と給与水準で大きく変わります。世帯の中で誰がいくらの厚生年金に加入しているのかを、ざっくりでよいので把握しておくと、改正の影響もイメージしやすくなります。
次に、生命保険など民間の死亡保障を見直すかどうかを夫婦で話しておきます。公的な遺族年金が縮小される世代では、民間保険でカバーする額を増やすか、共働きを前提に世帯収入を維持する形にするか、選択肢が変わってきます。子どものいるご家庭は遺族基礎年金が増額される方向なので、保障の組み立ても変わるはずです。
3つ目は、共働きを続けるかどうかの方針です。改正後は所得制限が外れるので、自分の収入があっても遺族厚生年金は受け取れます。世帯としては共働きを続ける方が、ご自身の老齢厚生年金も育つため、長期で見た家計の安定度は高くなります。
無理に保険商品を増やすよりも、まずは「自分が制度上どの区分に入るか」「家計でどこを優先するか」を整理する方が、結果として失敗の少ない準備になります。
確認したいときの相談先
制度の話で迷ったときの相談先をまとめます。
- 住所地の年金事務所(窓口・電話。自分の加入歴やケース別の試算を確認)
- ねんきんダイヤル 0570-05-1165(一般的な相談)
- ファイナンシャルプランナー(家計・保険見直しを含めた相談)
- 社会保険労務士(手続きや給付計算の専門相談)
ねんきんネットからのオンライン照会は、加入歴の確認や見込み額の試算がしやすいので、まずは自分の状況を把握するところから始めるのが効率的です。家計や保険商品の見直しは、制度の話を一度整理してから進めると、不要な乗り換えを避けられます。
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参考資料
- 厚生労働省 遺族厚生年金の見直しについて
- 厚生労働省 年金制度改正法 主な改正内容(PDF)
- 厚生労働省 遺族厚生年金の見直しに対して寄せられている指摘への考え方(PDF)
- 日本年金機構 遺族厚生年金
掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。
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