去年の灯油は使わない。ストーブの芯が固着する理由と、引き取り先の探し方

この記事の要点

前シーズンの灯油は使わず、新しい灯油に入れ替えます。見た目が透明で異臭がなくても、判断の基準は日光の当たらない場所で保管できていたかどうかです。市区町村はごみとして回収しないので、購入した店かガソリンスタンドに電話で引き取りを確認してください。

  1. 持ち越した灯油は、日本ガス石油機器工業会の区分で「不良灯油」にあたり使用禁止
  2. 紫外線で成分が変質してガム状の物質ができ、しん式ストーブでは芯が下がらず消火できなくなる
  3. 市区町村はごみとして回収しない。購入した店、断られたらフルサービスのガソリンスタンドへ
どうする?編集部 · · 読了 約8分
目次(11項目)
  1. 工業会の区分では、持ち越した灯油は「不良灯油」に入る
  2. 透明でも判断できない。見るのは保管場所
  3. 危ないのは燃え上がることより、消火できなくなること
  4. 死亡事故の主な原因に、変質灯油は挙がっていない
  5. 市区町村はごみとして回収しない
  6. 引き取り先は「買った店 → 断られたらフルサービスのガソリンスタンド」の順
  7. 下水・側溝・地面に流すと、費用と罰則が本人に来る
  8. 空になったポリタンクは、自治体のごみに出せる
  9. 来シーズン、また残さないために
  10. 当てはまらない人・この記事で扱っていないこと
  11. 参考資料

前シーズンから残った灯油は使わず、新しい灯油に入れ替えます。まず見るのは灯油そのものではなく、どこに置いていたかです。日の当たる場所やベランダに出していたなら、透明に見えても変質していると考えて入れ替えてください。残った分は市区町村のごみに出せません。購入した店に電話して引き取ってもらえるか聞き、断られたらガソリンスタンドに回します。下水や側溝、地面に流すのはやめてください。費用負担と罰則が流した本人に来ます。

工業会の区分では、持ち越した灯油は「不良灯油」に入る

日本ガス石油機器工業会は、使ってはいけない灯油を 不良灯油 と呼び、その中身を次のように分けています。

区分中身扱い
正常灯油透明である/不純物の混入がない/灯油の臭いがする使える
変質灯油持ち越した灯油、温度の高い場所で保管した灯油、日光のあたる場所で保管した灯油使用禁止
不純灯油水やごみなどが混入した灯油、ガソリン・軽油・シンナー・機械油・天ぷら油などが混入した灯油使用禁止

**「持ち越した灯油など」が、それだけで変質灯油に挙げられています。**劣化の程度を測ってから判断する、という書き方にはなっていません。同工業会は、水抜剤や助燃剤を添加した灯油も使用禁止としています。

消費者庁も、シーズン初めの点検として挙げる5点のうち3番目に「燃料は新しい灯油を使い、昨シーズンの灯油は使わない。」を置いています。残りの4点は、ほこりの除去、対震自動消火装置の作動確認(石油ストーブでは燃焼筒が正しく付いているかも見ます)、カートリッジタンクの給油口蓋の閉まり具合と漏れ、機器と周囲の壁や可燃物との距離です。

透明でも判断できない。見るのは保管場所

「色も変わっていないし、においも普通だから大丈夫」と考えたくなりますが、この判断には無理があります。

製品評価技術基盤機構(NITE)は、灯油に紫外線を照射すると成分が変質してガム状物質が生成すると説明しています。工業会側の記述も「変質灯油は色が着くことがある」という言い方で、必ず色が着くとは書いていません。つまり色は出れば手がかりになりますが、出ていないことは安全の証明になりません。

そのため、判断の軸は見た目ではなく保管の条件になります。NITEが挙げている保管方法は次の3点です。

  • ポリエチレンかん(ポリタンク)で保管する場合は、灯油専用のものを用いて、蓋をしっかりと締める
  • 日光の影響を避けるために、必ず暗所に保管する
  • 長期間使用して色あせやひび割れがあるものは買い替える。製造後5年を経過したポリタンクは取り替えを推奨

工業会も、火気・雨水・ごみ・高温・日光を避けた場所で、紫外線を通しにくい色付きの灯油用ポリタンクを使うよう求めています。物置の奥の暗い場所に、蓋を締めた専用容器で置いていたのか、ベランダや庭先に出していたのか。そこが分かれ目です。

危ないのは燃え上がることより、消火できなくなること

変質灯油の何が問題なのかは、機器の仕組みに関わります。

NITEの説明では、ガム状の物質が芯の先端付近に付着して膨らみ、芯が下がらず、消火できません。しん式の石油ストーブは芯を下げて火を消す構造なので、芯が固着すると消火の操作が効かなくなります。同機構は、その状態で機器が倒れると対震自動消火装置が正しく働かず、装置が作動したあとも燃焼が続くことがあるとしています。

工業会は、変質灯油を使ったときに現れる症状を3つ挙げています。

  • 点火時、火がつきにくくなる
  • 燃焼筒の赤熱が悪くなる
  • においがきつく目にしみる

「つきが悪いな」「今年はにおうな」で終わらせず、燃料を疑う手がかりとして読んでください。なお、芯の固着はしん式ストーブの構造に由来する現象です。ファンヒーターについては、工業会が挙げる点火不良や不完全燃焼・異常燃焼のおそれという一般的な記述までが、今回開いたページで確認できた範囲です。

死亡事故の主な原因に、変質灯油は挙がっていない

危険の種類を取り違えないために、数字の中身も見ておきます。

NITEが2019年11月に公表した調査では、2014年度から2018年度の5年間で石油ストーブ・石油ファンヒーターの事故が337件あり、そのうち321件が火災、35%(119件)が全焼でした。死亡事故は50件で57人です。

ただし、この死亡事故の主な原因として挙げられているのは、給油時に灯油がこぼれて火災になった、間違えて給油したガソリンに引火した、使用中に可燃物が接触して発火したというもので、その中に変質灯油は出てきません。「古い灯油で何十人も亡くなっている」という読み方は、この資料からはできません。

古い灯油の危険は、急に燃え上がることではなく、止めたいときに止まらなくなることです。危険の中身が違うので、対処も違います。給油時の火災はストーブを消してから給油することで防ぎますが、芯の固着は燃料を入れ替えるしかありません。

市区町村はごみとして回収しない

多くの人が止まるのは、残った灯油の行き先です。

灯油は消防法上の危険物(第4類 引火性液体の第2石油類)にあたるため、家庭ごみとしては集められません。台東区の清掃事務所は「ごみとして回収できません」と明記し、「購入された取扱所やガソリンスタンド等で灯油の廃油処理をお願いしてください」と案内しています。三鷹市も「市では石油類の回収はしておりません」として、購入先への問い合わせを求めています。

指定袋に入れる、少しずつ新聞紙に染み込ませて出す、といった方法はどれも自治体の案内から外れています。お住まいの市区町村のページで確認するときは「(市区町村名) 灯油 処分」で検索し、ごみの分類一覧ではなく危険物・廃油の扱いを書いた項目を見てください。

引き取り先は「買った店 → 断られたらフルサービスのガソリンスタンド」の順

自治体の案内は「販売店へ」で止まっているものが多いのですが、新潟市の回答はその先まで書いています。

  1. 灯油を購入した店に引き取りを頼む
  2. 断られた場合は、ガソリンスタンドに引き取りを頼む
  3. 同じ系列でも対応が異なるため、フルサービス(車検等を行っている)の店舗に相談する

費用については「店舗により、有償または無償で灯油を引き取ります」とされており、金額は示されていません。持ち込む前の電話で、次の3点をまとめて聞くと一往復で済みます。

  • 家庭で使い残した灯油を引き取ってもらえるか
  • 費用はかかるか、かかるならいくらか
  • ポリタンクごと持って行っていいか、中身だけ移すのか

電話ではこう言えば伝わります。「家庭用の石油ストーブで使い残した灯油が**(おおよその量)**リットルあります。引き取りをお願いできますか。有料でしたら金額を教えてください。」量を先に言うと、店側が受けられるかどうかをその場で判断できます。

運ぶときは、蓋を確実に締め、容器を倒れない向きで積みます。車内にこぼすと臭いが長く残ります。

下水・側溝・地面に流すと、費用と罰則が本人に来る

流して済ませたくなる場面ですが、ここは金額の桁が変わります。三鷹市が挙げている影響と負担は次のとおりです。

  • 下水道管で石油類が揮発し、それに引火することで爆発事故が起きる恐れ
  • 河川にそのまま流れ出て、そこに住む生き物に悪影響
  • 近隣の住宅等の排水口から揮発した石油の臭いが上がり、広範囲に悪臭被害
  • 下水処理場の生物処理機能を損傷
  • 下水道管の清掃作業のために道路を通行止めにしなければならない場合がある

費用は、原因者が下水道法第18条に基づき修復費用を負担します。河川を汚した場合は河川法第67条で清掃費用の負担を命じられることがあります。三鷹市は、これらが「流出の状況に応じて非常に大きな金額になる場合」があるとしています。さらに廃棄物処理法第25条に基づき、5年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金が科せられる場合があるとしています。

土に染み込ませる、駐車場にまいて乾かす、といった方法も同じ枠に入ります。

空になったポリタンクは、自治体のごみに出せる

中身の行き先が決まれば、容器は通常のごみの流れに戻ります。横浜市の案内では、灯油を使いきった上で、最長辺が50cm未満なら「プラスチック資源」として週1回の収集に、50cm以上なら粗大ごみとして出します。事業所から出るものは家庭ごみの集積場所に出せません。

サイズの境目や分類名は市区町村ごとに違うので、ご自身の分別一覧で「ポリタンク」「灯油用容器」を探してください。中身が残ったままでは出せないので、順番は、中身の引き取り先を決める → 空にする → 容器を出す、です。

なお、色あせやひび割れのある容器や製造後5年を過ぎた容器は、NITEが取り替えを推奨しています。来シーズンも使うつもりの容器でも、この段階で見ておくと判断しやすくなります。

来シーズン、また残さないために

同じ場面を繰り返さない方法は、量の決め方と保管の2つに絞られます。

  • シーズン中に使い切る量だけ買う。 NITEは「現在使用中の灯油は今シーズン中に使い切るようにしてください」としています。残りを翌シーズンに回す前提で多めに買うと、そのぶんが必ず引き取り先探しに変わります。
  • 暗所・専用容器・蓋をしっかり。 屋外に置く場合も、日光と高温、雨水とごみを避けます。
  • 気温が上がる時期に片づけるとき、機器の中の灯油も抜く。 カートリッジタンクと油受皿に残った分の抜き取り手順は機種ごとに違うので、取扱説明書の「シーズンオフの手入れ」の項を見てください。ここを飛ばすと、次のシーズン初めに抜けない場所に変質灯油が残ります。

当てはまらない人・この記事で扱っていないこと

  • エアコンや電気暖房だけの家庭 — 灯油を扱わないため、この記事の対象外です。
  • 寒冷地の屋外ホームタンクで常時補充している家庭 — 残量を切らさず使い続けるため、持ち越しの考え方が変わります。今回開いた資料にホームタンクの持ち越しについての記述はなく、扱いを判断できませんでした。タンクの設置業者か配達業者に直接確認してください。
  • 事業所・店舗から出る灯油 — 家庭ごみの流れに乗りません。横浜市も事業所から出るものは家庭ごみの集積場所に出せないとしています。
  • 引き取りの相場 — 有償か無償かは店によるという記述までで、金額の目安を示した公式の資料は見つかりませんでした。本文に金額を書いていないのはそのためです。

参考資料

  • 製品評価技術基盤機構(NITE)「灯油の保管と石油ストーブのしまい方について(事故防止)」
  • 製品評価技術基盤機構(NITE)石油ストーブ「10.変質灯油で異常燃焼のおそれ」
  • 製品評価技術基盤機構(NITE)「石油ストーブ・石油ファンヒーターの事故、5年間で57人死亡」(2019年11月28日公表)
  • 日本ガス石油機器工業会「不良灯油の使用禁止」
  • 消費者庁「シーズン初めの石油ストーブ安全大作戦」
  • 新潟市役所コールセンター「古い灯油の処理方法について」
  • 台東区「使い切れなかった灯油の処分について」
  • 三鷹市「危険です!余った灯油等は下水に流さないで!!」
  • 横浜市「灯油を入れていたポリタンクの出し方」
Photo by Edanur Ağaç on Unsplash
#灯油 #暖房 #石油ストーブ #処分

参考資料

  1. 製品評価技術基盤機構(NITE)「灯油の保管と石油ストーブのしまい方について(事故防止)」
  2. 製品評価技術基盤機構(NITE)石油ストーブ「10.変質灯油で異常燃焼のおそれ」
  3. 日本ガス石油機器工業会「不良灯油の使用禁止」
  4. 消費者庁「シーズン初めの石油ストーブ安全大作戦」
  5. 新潟市役所コールセンター「古い灯油の処理方法について」

掲載時点で確認した資料です。制度やガイドラインは変わることがあるため、手続き前には各機関の最新情報も確認してください。

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ご注意 この記事は一般的な情報を整理したものです。症状・家計・契約・法律関係など、個別判断が必要な場合は、医師・税理士・弁護士・行政窓口などにも確認してください。

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