近所の医院では埒が明かない気がして、駅前の総合病院へ直接行こうかと考える。そこで引っかかるのが、紹介状なしだと数千円を上乗せされるという話です。
かかるかどうかは、二つで決まります。行き先の病床数が200以上かどうか。そして、他の病院や診療所からの文書による紹介があるかどうか。この二つが「200床以上」と「紹介状なし」でそろったときに、診察代とは別の「特別の料金」が生じます。ただし、緊急その他やむを得ない事情があるときは、そろっていても対象外です。
200床という線は、国の告示に書いてある
厚生労働省の告示(評価療養、患者申出療養及び選定療養を定めたもの)は、選定療養の一つとして次を挙げています。
病床数が二百以上の病院について受けた初診(他の病院又は診療所からの文書による紹介がある場合及び緊急その他やむを得ない事情がある場合に受けたものを除く。)
読みどころは括弧の中です。除かれるのは「文書による紹介がある場合」と「緊急その他やむを得ない事情がある場合」の二つだけ。裏返せば、200床未満の病院や診療所では、紹介状を持たずに行ってもこの料金は制度上そもそも発生しません。「大きい病院」という体感ではなく、病床数が線になっています。
選定療養は、厚生労働省が「将来的な保険導入を前提としないもので、患者の選択により特別の料金を支払うことで保険外の診療と保険診療を併用するもの」と説明している枠組みです。同じ枠には特別の療養環境(差額ベッド)、予約診療、時間外診療などが並び、そこに「大病院の初診」「大病院の再診」が置かれています。保険がきかない部分なので、3割負担にはならず、掲示された額をそのまま払うことになります。
200床以上なら必ずかかる、ではない
対象の範囲は令和4年10月1日に広がりました。厚生労働省はこのとき、一定規模以上の対象となる病院では紹介状を持たずに外来受診した患者等から一部負担金とは別に特別の料金を徴収するとし、あわせて金額も引き上げています。
このときに加わったのが「紹介受診重点医療機関」です。東京都はこれを、かかりつけ医等からの紹介状を持って受診する医療機関であり、より専門的な検査や治療を重点的に行うもの、と説明しています。決まり方は病院の自己申告ではありません。医療機関が出す外来機能報告のデータをもとに、地域医療構想調整会議で協議して公表される仕組みで、東京都が示している基準は初診に占める割合40%以上かつ再診に占める割合25%以上です。
北海道は、一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関では、紹介状を持たずに外来受診する患者等から一部負担金(3割程度等)とは別に特別の料金を徴収することとしている、と書いています。「できる」ではなく「することとしている」。この類型に入った病院に、取らないという選択肢は残されていません。
一方、病床数が200以上でもこの類型に入っていない病院は、取る場合も取らない場合もあります。だから「200床以上だから必ず数千円」とは言い切れません。行き先ごとに違う、というのが正確なところです。
もう一つ、この一覧は固定ではありません。千葉県は最初の公表を令和5年8月1日に行い、その後も年度の変わり目に医療機関を追加してきました。去年は対象外だった病院が、今年は対象に入っていることがあります。前に一度調べたから大丈夫、とは考えないほうが安全です。
2回目以降がかかる条件は、初診とは別
ここが一番誤解されている部分です。告示は再診も選定療養に挙げていますが、括弧の中の書き方が初診とは違います。
病床数が二百以上の病院について受けた再診(当該病院が他の病院(病床数が二百未満のものに限る。)又は診療所に対して文書による紹介を行う旨の申出を行っていない場合及び緊急その他やむを得ない事情がある場合に受けたものを除く。)
除かれているのは「病院が紹介の申出を行っていない場合」です。つまり料金が生じるのは、病院の側が「近くの医院か、200床未満の病院へ紹介します」と申し出たのに、それを受けずに同じ病院へ通い続けたときに限られます。
紹介状を持って初診にかかり、そのまま治療を続けている間は、この申出がない以上、再診の特別の料金は出てきません。「大きい病院に通っていると毎回上乗せされる」という理解は、この条件を落としています。
分かれ目になるのは、外来で「そろそろ近くの先生に戻りましょうか」と言われた日です。その場で断って通い続けるなら、次の受診から支払いが変わる可能性があります。返事を保留にして、会計か地域連携室で「紹介先に移らない場合、再診のときに別途いくらかかりますか」と聞いてください。金額を聞いたうえで決めても遅くありません。
金額は病院ごとに違う。国が決めているのは下限
東京都は、国が定める最低額として医科の初診7,000円以上、再診3,000円以上を挙げています。「以上」なので、実際にいくらにするかは病院が決めます。最低額そのものは制度改定で動くため、行き先の病院が掲示している額を見るのが確実です。
金額の出方の一例として、埼玉県の草加市立病院があります。同院は令和6年4月1日に埼玉県から紹介受診重点医療機関の承認を受けた200床以上の病院で、初診は医科7,700円・歯科5,500円、再診は医科3,300円と公表しています。国の下限より高い額が設定されていること、そして再診は初診の半分以下に置かれていることが、この例から読み取れます。
行く前の3分で確かめる
1. 行き先の病院のサイトを「選定療養費」で探す。 対象になっている病院は「選定療養費について」「初診時特別料金」といった名前のページを持っていることが多く、金額と、徴収しない場合が並べて書かれています。草加市立病院のページがその形です。
2. 都道府県のサイトで一覧を見る。 紹介受診重点医療機関は都道府県が一覧を公表しています。東京都、北海道、千葉県はいずれもサイトに掲載しており、千葉県の一覧には医療機関名・住所・一般病床数と公表日が並んでいます。年度の変わり目に追加公表されるので、見ている一覧の公表日を確かめてください。
3. 電話で聞く。 サイトで分からなければ、代表番号に次の二つを聞けば足ります。
- 「紹介状なしで初めて受診した場合、診察代のほかにいくらかかりますか」
- 「健診の結果票を持って行った場合、その料金の対象になりますか」
二つ目を入れておくのは、健診で引っかかって受診する人が多いからです。ここで「対象になります」と言われたなら、先に近くの医院にかかって紹介状を書いてもらう道を選べます。予約を取ってから聞くのでは順番が逆で、電話は予約より前に済ませてください。
「取らない場合」を病院が公表していることがある
告示が置いている例外は、繰り返しになりますが「文書による紹介」と「緊急その他やむを得ない事情」の二つです。ただ実際の病院は、もう少し細かく自院の扱いを公表していることがあります。
草加市立病院が徴収しない場合として挙げているのは、他の医療機関からの紹介状を持って受診したとき、重篤な症例で外来受診後に即日入院となったとき、院内の他科から紹介されたとき、生活保護法による医療扶助の対象であるとき、公費負担制度の受給対象であるとき(一部除外あり)、公的制度に基づく特定健康診査やがん検診の結果で精密検査を指示されたとき、労働災害・公務災害にあたるときです。
これは一つの病院の運用であって、全国共通の決まりではありません。ただ、どういう場面が「取らない側」に置かれやすいかの目安にはなります。自分の状況がこの並びのどれかに近いなら、電話で確かめる価値は十分にあります。
紹介状をもらう側の段取り
近くの医院で紹介状(診療情報提供書)を書いてもらう場合、その場で受け取れることもあれば、後日になることもあります。日数の目安は公的な資料に示されていないため、受診時に「紹介状は今日もらえますか、それとも後日ですか」と直接聞いてください。後日と言われたなら、大きい病院の予約日はその受け取り以降に置きます。
紹介状の作成は保険診療の扱いで、窓口で払う額は初診7,000円以上という特別の料金の下限と比べれば小さく収まるのが通例です。正確な額は医院の窓口で確かめられます。急がない症状であれば、医院を一度はさむほうが金銭的には有利になります。逆に、症状が重く急ぐなら、料金より受診の早さを優先してかまいません。緊急その他やむを得ない事情は、告示が正面から例外として置いているものです。
判断の順番
迷ったら、次の順で見ていけば足ります。
- 行き先の病床数は200以上か。200床未満なら、この料金の話はここで終わりです。
- 200床以上なら、その病院のサイトか電話で、紹介状なし初診の金額を確認する。都道府県の紹介受診重点医療機関一覧に名前があれば、徴収されると考えて動く。
- 金額が分かったうえで、近くの医院で紹介状を書いてもらってから行くか、そのまま行くかを決める。急ぐ症状かどうかがここでの判断材料です。
- 通院が続くことになったら、病院から他院への紹介を勧められた日を覚えておく。再診の特別の料金が出てくるとすれば、その日から先の話になります。
金額そのものより、どの分岐に自分がいるかを先に押さえるほうが早く片づきます。