スタッドレスタイヤに替える日を決めるとき、多くの人が初雪の予報を待ちます。ところが気象庁の平年値を開くと、名古屋では霜の初日が初雪より18日早く、大阪では16日早く来ています。雪を合図にすると、その手前の2週間あまりを夏タイヤで走ることになります。
替える日は、自分の住む地点の平年値から自分で出せます。気象庁の「過去の気象データ検索」に、霜・雪・結氷それぞれの初日の平年値が地点ごとに載っています。この3つのうちいちばん早い日付が、装着を終えておく目標日です。
ただし新潟と金沢では、雪のほうが先に来ます。日本海側と内陸・太平洋側で、見るべき現象が入れ替わります。全国共通の「11月中旬まで」という言い方では自分のカレンダーに書き込めないのは、このためです。
「7℃で履き替え」は、JATMAにもブリヂストンにも書かれていない
「気温7℃を下回ったら」という目安をよく見かけます。ただ、この記事で開いた一次情報には、その数字が出てきませんでした。
一般社団法人日本自動車タイヤ協会(JATMA)の「冬道走行とタイヤ」は「早めの準備で雪道・安全走行を!」と呼びかけ、積雪路や凍結路を走るなら残り溝深さが新品時の50%以上あるかを見るよう求めています。このページに温度の記載は一つもありません。ブリヂストンのBLIZZAK公式Q&Aも、「スタッドレスタイヤはいつ頃装着すればいいの?」には「いつ雪が降るか分からないので、早めに準備することが大切です」と答えるだけです。
ブリヂストンのQ&Aに温度が出てくる箇所は一つあります。雪が積もっていなくてもスタッドレスが要るのかという問いへの答えで、「最低気温が3℃以下になると、路面の温度は氷点下を下回る恐れがあり、普段雪が降らない都市部でも路面が凍結する日が多くあります」と書いています。これは凍結が起きる理由の説明で、履き替え日を決める基準としては書かれていません。日陰や橋の上が凍りやすいことも、同じ答えの中で触れられています。
つまり、合図を雪ではなく凍結側に置く考え方自体はメーカーの説明と同じ向きです。ただし何月何日に動くかは、そこからは出てきません。日付を出す材料になるのが、気象庁が地点ごとに公表している実測の平年値です。
JATMAの書き方には、もう一つ手がかりがあります。同協会は冬用タイヤの使用場面を「積雪路及び凍結路」と並べて書いています。凍結路が入っているので、合図は雪に限りません。
気象庁で自分の地点の日付を出す。画面の操作は4つ
- 気象庁の「過去の気象データ検索」を開きます。
- 「地点の選択」の「都府県・地方を選択」から自分の県を選び、続いて最寄りの地点を選びます。
- 「データの種類」の一覧から「霜・雪・結氷の初終日と初冠雪日の平年値を表示」を選びます。
- 出てきた表の「霜」「結氷」「雪」それぞれの初日を書き写し、いちばん早い日付に丸をつけます。
丸をつけた日が、装着を終えておく目標日です。3つのうちどれが先に来るかは地点で変わるため、他県の人の答えは借りられません。
10地点の平年値。初雪より先に凍り始めるところが多い
下の各行は、気象庁の同じページを地点ごとに開いた値です。日付の早い順に並べています。
| 地点 | 霜の初日 | 結氷の初日 | 雪の初日 | いちばん早い日 | 初雪との差 |
|---|---|---|---|---|---|
| 札幌(北海道) | 10月25日 | 10月28日 | 10月28日 | 10月25日(霜) | 3日 |
| 青森 | 11月1日 | 11月10日 | 11月8日 | 11月1日(霜) | 7日 |
| 長野 | 11月1日 | 11月7日 | 11月18日 | 11月1日(霜) | 17日 |
| 仙台(宮城) | 11月14日 | 11月23日 | 11月17日 | 11月14日(霜) | 3日 |
| 新潟 | 11月27日 | 12月3日 | 11月23日 | 11月23日(雪) | 雪が先 |
| 金沢(石川) | 12月4日 | 12月13日 | 11月24日 | 11月24日(雪) | 雪が先 |
| 名古屋(愛知) | 11月30日 | 12月6日 | 12月18日 | 11月30日(霜) | 18日 |
| 大阪 | 12月10日 | 12月17日 | 12月26日 | 12月10日(霜) | 16日 |
| 福岡 | 12月13日 | 12月17日 | 12月16日 | 12月13日(霜) | 3日 |
| 東京 | 12月23日 | 12月24日 | 1月3日 | 12月23日(霜) | 11日 |
差が大きいのは長野、名古屋、大阪です。名古屋で初雪を待つと、平年なら18日分の朝を夏タイヤで迎えます。東京も11日分あります。
札幌、仙台、福岡は3日しか違いません。この3地点では、初雪を目安にしても大きくは外れません。ただし札幌の場合、その初雪の平年日が10月28日です。早いのは差ではなく、暦のほうです。
新潟と金沢は雪が先。日本海側では表の読み方が変わる
新潟は雪の初日が11月23日で、霜の初日より4日早い。金沢は雪が11月24日、霜が12月4日で、差は10日あります。この2地点では、初雪の予報を合図にしても凍結を取りこぼしません。
内陸や太平洋側では、晴れて風の弱い朝に霜が降り、それが雪の前に来ます。日本海側では雪をもたらす気圧配置のほうが先に届きます。10地点では新潟と金沢がこの形でした。自分の地点がどちらなのかは、上の操作で出した3つの日付を比べれば分かります。覚えておく必要はなく、毎年同じページで確かめられます。
今日やること
1. 目標日を決める。 上の4ステップで自分の地点の3つの日付を出し、いちばん早い日をカレンダーに書き込みます。この日付は平年値なので、毎年使い回せます。
2. 手持ちのタイヤが今季使えるか見る。 JATMAは、積雪路・凍結路を走るなら残り溝深さが新品時の50%以上あることを確認するよう求め、「接地部にプラットホームが設けられているタイヤの場合は、これが露出しているか否かで判断して下さい」と書いています。露出していれば、冬用タイヤとしては使いません。買い直しが必要かどうかは、この一点を見れば先に分かります。
3. 交換先に電話して、待ち日数を聞く。 聞くことは2つです。「冬タイヤへの交換は、いつから予約を受け付けていますか」と「いま予約すると、最短で何日後の枠になりますか」。
答えが出たら引き算をします。名古屋の目標日は11月30日です。仮に「最短10日後」と言われたとすると(この10日は仮の数字です)、11月20日までに電話を入れれば枠が取れる計算になります。自分の地点の日付と、電話で聞いた日数で同じ引き算をしてください。
この3つは何月でもできます。目標日より早い時期に読んでいるなら、2と3を先に済ませておくと、1の日付が近づいたときには動くだけで済みます。
装着は全輪。2本だけで済ませる形はすすめられていない
JATMAの「冬道走行とタイヤ」は、都道府県ごとの規則を並べています。北海道は「スノータイヤを全車輪に装着し、又はタイヤ・チェーンを取り付ける等滑り止めの措置を講ずること」、新潟県は、駆動輪に鎖を付けるか「全車輪に、すべり止めの性能を有する雪路用タイヤを取り付けること」のどちらかを求めています。チェーンではなくタイヤで対応するなら全輪、という書き方です。地域によっては、全輪という条件が規則の文面に入っています。
ブリヂストンのQ&Aは、駆動輪だけに履かせる場合について「駆動輪だけの装着ですと、車両が安定して走行することができません」と答え、同一商品ブランドのスタッドレスタイヤを全輪に装着するよう求めています。前後で違う銘柄を混ぜる形も、この答えの外にあります。
2本分の予算で前輪だけ替える案は、費用の話としては成り立ちます。ただし上の2つの出典に照らすと、すすめられている形ではありません。
夏タイヤに戻す日付も、同じ表の右半分で分かる
気象庁の同じ表には、霜・雪・結氷それぞれの「終日」の欄があります。春にいつまで凍結や降雪の実績があるのか、初日と同じ形で読めます。戻す側の目標日も、他人の目安を借りずに自分の地点で出せます。
表を読むときに外しやすいところ
- 平年値は1991年から2020年までの30年間の観測値から算出されています。 10年ごとに更新されるので、長く使うなら数字を一度見直してください。
- 「資料年数」は観測された年合計数です。 気象庁がそう注記しています。その現象が30年すべてで起きたのかどうかは、この欄で分かります。
- 「@」が付いた値は参考値、「///」は欠測です。 そのまま平年日として扱わないでください。
- 日付は気象台や観測所の1地点の記録です。 同じ市内でも、郊外、橋の上、山沿い、日陰の路面は先に凍ります。表の日付より前に装着を終えておくほうが、取りこぼしが少なくなります。
- 自分の市に地点がなければ、最寄りの地点を選びます。 標高が大きく違う地点だと日付がずれるので、海沿いと山間部のどちらに近いかは見ておいてください。
参考資料
- 気象庁「過去の気象データ検索」および各地点の「平年値(霜・雪・結氷の初終日と初冠雪日)」
- 一般社団法人日本自動車タイヤ協会「冬道走行とタイヤ」
- ブリヂストン「BLIZZAK スタッドレスなんでもQ&A」